第23話 試練 その一
「はーい。皆さん改めて、よろしくお願いしますねー」
『よろしくお願いします!』
おお。みんなの声が揃った。
Aクラスは先生も含めて全部で七人。
随分と個性的なメンバーだけど、みんなAクラスに入れるだけの実力があるのだ。
俺も頑張らないとな。
「それではさっそくー、授業を始めますー。皆さんの仲を深めるために一つ試練を与えるのでー、協力して乗り越えてくださーいね」
試練?なんだろうか。
協力ってことは一人では難しいのかな?
「ではー、皆さんは特別訓練場に移動してくださいー。あとー、もう試練は始まっていますのでー」
『ええっ!?』
またハモった。
特別訓練場?ドコだよソコ?
「あのー、特別訓練場とはどこなのですか?」
今、先生に聞いたのはリックだ。
「それも試練のうちですー」
だそうだぞ、リック。
ふーむ。自分達で探せということか。
たしかに一人では時間がかかるな。
「よし、みんな。手分けして探そう。とりあえず試験順に二人組を作ってくれ」
そう言ったのはアルだ。
リーダー格のある、体格もガッチリした奴だな。
「分かった。じゃあ乃愛、おいで」
「うん!えへへ、さっくんと一緒だ〜♪」
乃愛は平常運転だな。とっても嬉しそうだ。
後ろのロザリアの目線が気になるけど。
「…仕方ありませんわね。行きますわよ、アルベルト様」
「アルベルトで構いませんよ、ロザリア様」
「其方もロザリアで結構ですわ、アルベルト」
「了解した、ロザリア」
ふむ。さっそく仲良く出来ているな。
さすがはイイトコの子ども達だな。
人付き合いには慣れてるのか。
人のこと言える地位ではないけども。
「それじゃあ私たちも行くわよ。えっと、リカルド君?」
「は、はい。よろしくお願いします、ルナマリアさん」
「クラスメートなんだし、敬語は辞めようよ」
「う、うん、分かったよ。よろしくね、ルナマリア」
「こちらこそよろしく、リカルド」
こっちも順調みたいだな。
二人とも身分は高く無いけど、実力者なんだから万が一でも、心配は要らないだろう。
「じゃあ乃愛、俺達も行くか」
「うんっ!」
こうして俺達は特別訓練場とやらを探すことにした。
俺と乃愛は校舎内を、ロザリアとアルは入り口付近を、リックとルナは体育館の辺りを探すことになった。
見つけた時は空に向かって魔法を撃って知らせるようにと、リックから提案があった。
たしかにどのペアも魔法は使えるし、音や光などで伝えられるので便利だ。
やっぱり頭良いな、リック。
それから俺と乃愛は一通り校舎を探したが、訓練場と呼べるような部屋はなかった。
ちなみに捜索中はずっと手をつないでいました。
「うーん、校舎には無いのかなぁ?」
「そうみたいだな。近くにロザリア達がいるはずだから、合流するか?」
「そだね、それがいいと思うな」
そういうわけでロザリア達とついでに訓練場を探していると、「パァーーン!!」という音が空から聞こえてきた。
見てみると土魔法のようだった。
「土魔法…かな?」
「うん、そうだな。ってことはリックか」
「リック?あぁリカルド君のことね。さっくんってあだ名つけるの好きだよね」
「そう?でも乃愛にはつけて無いだろ?」
「そだね。でもさっくんに乃愛って呼ばれるのは好きだからこのままでいいよ」
「そっか、分かったよ乃愛!」
「えへへっ♪」
イチャイチャしながらリックが撃ったと思われる場所まで小走りで向かうと、みんな集まっていた。
そこは最初に試験をした体育館の裏だった。
「サニー君とノルンちゃんか、これで全員揃ったな」
「ああ、お待たせ」
「私たちも
チラと乃愛を見る。
ちょっと不機嫌そうだ。
まるで「それはさっくんのセリフだもん」とか言いそうな。
いや、ホントに俺にしか聞こえないくらいの小声で言ってるし。
「それで、リックだよね?土魔法撃ったのって」
「は、はい。いや、うん。え?リック?あ、そうだよ。僕が撃ったんだ」
「あーゴメン。俺ってあだ名つけるの好きだから、勝手にみんなに付けさせてもらうね」
「う、うん。ありがとうサニー君」
「それでここ…なの?」
「うん。ここに隠し扉があって……」
そう言いながら体育館の壁を叩くと、壁の一部が持ち上がって奥から階段が現れた。
これにはみんな揃って驚いていた。
「凄っ!というかよくこんな所見つけたな。お手柄だよ、リック」
「そうかな?ありがとう。土魔法を応用したらこういう事が出来るって僕のお父さんが教えてくれたから」
マジですか。
土魔法にこんな使い道があったとは。
階段の横の壁にはちゃんと「この先特別訓練場」って書いてあるし、間違い無さそうだ。
「みんな暗いから足元に気をつけろ。俺が様子を見てくるから、ゆっくり慎重にな。松明でもあれば火魔法で明かりを付けられるんだが……」
松明がいる。
アルはそう言ったけど、ゴメンね。
その心配は杞憂に終わると思うよ。
「や、大丈夫だよ。俺が明かりを付けるから」
「? どうやって…おおっ!」
俺は火と幻魔法を使って、階段の先までを照らした。
「さっすがさっくん!」
「確かに凄いぞ。というか無詠唱だと?」
「えっ?無詠唱ってシャルマン語が完璧じゃないと無理だって本に書いてたわよ。凄いのねサニー君って」
「サニー様なら当然ですわ」
「す、凄いんだね。サニー君」
「え?ああ、みんなありがと」
そこまで凄いのか?
ただ階段を照らしただけだぞ?
ああ幻魔法か、それなら説明がつくな。
こうして俺達はゆっくりと階段を降りていった。
奥には大きな扉があった。
「アル、手伝ってくれ」
「アル?良いな。気に入ったぞ。よし、サニーは右側を頼む」
「あいよ」
俺はアルと協力して、固くて重い扉を開けた。
するとそこにはルイ先生がニッコリとしながら立っていた。
「あらあらー、随分と早かったですねー。普通は一日では見つけられないんですよー」
「ルイ先生、試練ってこれで終わりですか?」
「いえいえー、ここからが本番ですー」
ルイ先生はそう言い残すと、姿を一瞬で
代わりに部屋の奥から『ドシン!ドシン!』と大きな音が響いて、巨大なドラゴンの魔物が現れた。
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