アリス・クリードの失踪

 今年の夏は見逃した映画がたくさんある……。


 中でもうかつだったのが「カメラを止めるな!」をまだ観ていないこと。そしてそれを観た男の子に(映画好きとか言っていたが、少し会話をすればわかる。ヤツの映画愛はたいしたことない)自慢気に言われた。


「今まで観たことない映画でしたよ! こんなのあるの? って感じでした!」



 映画って、そういうのたまに出てくるよね。わかるよ。

 だから今日は『アリス・クリードの失踪』の話をしようと思ったわけ。




 映画は在る部屋のシーンからはじまる。男がふたり、暴れまくる袋を抱えて入ってくる。中に入っていた美女をおさえつけながら、ベッドに縛りつけ、だまらせる映像が、なんの説明もなくセリフもなく、淡々と映される。


 そして映画がはじまる。




 何がすごいのだろう?


 おそらくストーリー自体は(素晴らしい部分ももちろんあるのだけど)よくある映画のそれだ。ただ、この物語は徹底して無駄がない。登場人物が三人しか出てこないのだ。はじめに出てくる男ふたりと女のみ。それで二時間を保たせる脚本よ。


 店で買い物するシーンやら、脅迫電話をかけるシーンはある。そこでもエキストラは一切登場しない。ちらりとも出ないし、声も出さない。ここがこの映画のこだわりなのだろう。そこがすごい。



「こんなの、初めて観た」

 ときどきそういう体験をさせてくれるから、映画が好き。

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