とりあえず読んだ

酔って候(歴史モノ・著:司馬遼太郎・目さん推薦)

 コメントにも書きましたが、筆者は司馬先生の小説があまり好きではありません。

 確か、学生時代(十年くらい前)に「国盗り物語」だったか「功名が辻」だったか「宮本武蔵」だったかを読んで、話が脱線するのでウボァーってなって、読むの辞めた思い出があります。


「いや、視点をいきなりずらさないで。ひょいと飛ばれるとこっちも困惑する!!」


 とか思って、それ以来あんまり興味を持たず、むしろ司馬先生の本は避けるようにして生きてきました。


 同じ理由で池波正太郎先生もあんまり得意じゃない。

 こっちは「真田太平記」で挫折しました。


 歴史小説の二大巨匠を相手にあんまりな言い草である。

 いいんだよ、こちとら戸部新十郎先生と遠藤周作先生、鈴木輝一郎先生で歴史小説成分はこと足りてんだから。


 などと言ってた所に目さんから本書「酔って候(著:司馬遼太郎)」のご推薦。

 特に目さんとは特別交流がある訳ではないんですけど、なんといってもコメントが早かった。一番槍をつけた方を、ぞんざいにもできまい。という訳で、推理小説の勉強の傍ら、ゆるゆる読み始めましたとさ。


 前置き長くなっちゃったね。


 うん――めちゃんこ面白かった。


 四賢候。


 なにそれ、めっちゃご飯が進む中二ワードなんですけど。

 FEとかであれやん、一人くらい仲間になってくれるポジション的な奴やん。

 パラディンもしくはジェネラルポジションの奴やん。渋オジポジの奴やん。

 好き!! もう言葉の響きだけで大好き!! そんなん日本に居たとは……。


 閑話休題。(閑話にもなってない)


 幕末の傑物たちの実像に驚かされるばかりの本作。

 人物を自分が知らないということは知っていたけど、それでも名前くらいは知っているような人物が実は――という感じで、実に勉強になる小説でした。

 あれ、山内容堂って意外と若かったのね。島津さんとこも色々あったんだな。伊達さん、先祖はアレなのに……天使かな? まぁ、その割には蒸気船競争とかしてたのは血は争えぬのぉ。おいおい!! 内政チートやってる場合かよ、鍋島ァ!!

 そんでまぁ、幕末でおなじみの後藤さんやら、大久保さんやら、西郷さんやら、ぞろぞろ出て来るじゃないのよ。あ、こいつら、こういうことしてたのね。

 大久保あくどい。あくどい、大久保。

 気が付きゃ苦手意識なぞどこかに霧散して突っ走るように読んでました。


 四賢候と書いた通り、山内容堂・松平慶永・島津斉彬・伊達宗城、feat.鍋島閑叟で、主人公に添えた短編集。

 内容の面白さもさることながら構成も面白い。先ほど読んだ話の主人公が、次の話で他の主人公の目から語られるなど、なかなか面白い。そこは一貫した歴史観を持ってないと、書けないだろうなという大文豪の胆力を思い知らされました。


 激動の幕末の時代を、志士が駆け抜けたのと同じように、藩主たちもまた見えない夜明けに向かって遮二無二に駆け抜けていたんだなぁ。

 なんというかそういう気付きを与えてくれる作品でございました。


 けど、一番好きなのは「伊達の黒船」っていうね。

 嘉蔵がやっぱりね、底辺技術者やってた自分とダブって見えちゃうのよね。

 下請けPGは涙なくして見られないよこの話。

 一方で嘉蔵みたいに、別にワシらおまんま食うだけの金と、やりがいのある仕事さえあれば、別に辛くともなんとも思わんよワハハという感覚も分からんでもないわけで。いや、昔から日本人って奴隷気質だったのかしらね。

 そして伊達宗城の分かってる上司っぷり。ほんとこの人、天使なんじゃないの。あの戦国の問題児独眼竜の血を受け継いでおられるのかしらねという出来物ぶり(たぶん養子縁組で血縁はないんじゃないかなぁ)。

 たまらん。幕末社畜、いや藩畜物語でした。


 次点、鍋島さん。「鎖国状態の日本で、俺の藩だけ貿易港持っている件について」な感じの内政チートはさぞ楽しかっただろうな。

 容堂さんと、久光さんは、どっちも無念よね、そりゃぁ。


 以上。

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