いつかはきっと下克上!!

人生の旅人

プロローグ

 

 どうやら、俺は死んだらしい。


「やぁやぁ、どうもどうも。突然だけど、最上敦さいじょうあつし。貴方は死にました。死因は寝不足気味で朦朧としたところを車にどぱんです」


 そこは真っ白で何の変哲もない個室だった。

 おかしな所があるとすれば、天井には満天の星空が浮かんでいること。

 そして、目の前に銀髪で起伏の乏しい美女が立っていること。

 そのくらいだろうか。

 いやまあ、今はそんなことどうでもいい。


 えっ、俺死んだの。マジで。

 今日が初出勤なんだけど、祝社会人スタートだったんだけど。

 しかもだ、五月病で自殺とかブラック企業のせいで過労死とかじゃなくてただの事故って。


 えぇ……。


「あのー、聞いてます? ショックなのはわかるのですが、おーい」


 確かに、確かにだけどよ。

 今日の早朝まで元中のやつとネトゲやってたよ、職場行く時もなんかふらふらしてたよ。

 そしたらこれって。


 えぇ……。


「あのすいません、無視は辛いんですけど。あのー? あのー!? あのー!!」


 うーむ、死んだということは俗に言うあの世とやらに連れて行かれるのだろう。

 天国で童貞卒業したいな。

 いやでも、今回の場合は俺の過失で死んだわけだから地獄行きか?

 地獄ってことは閻魔様との裁判があるんだっけ。

 それに勝てれば天国もまだ可能性あるな。


「うぉい! さっきから無視とはいい度胸じゃないですか! この女神様が貴方に耳寄りな情報を与えてあげようとここまで来てやったというのに!」


「さっきからうるせー奴だなあ! 俺は俺の今後を考えてるんだから黙っててくれ!」


「あんっ!? 女神よ女神! 私女神! あんた口の利き方がなってないんじゃないかしら!?」


「はぁ? 女神? んなもんいるわけねーだろ。ここは日本だぞ、日本には女神なんて居ないの。閻魔様と八百万の神しか居ないんですわ。分かる? それにほら、あんた貧相な身体してるし」


 肩まで伸ばした銀髪がキラキラと煌めいてたり、驚くほどに凹凸の無い肢体とか、服の合間からチラリと見え隠れする白い肌だったりと、何処と無くこの世のものとは思えない容姿をしている方ではあるが。

 女神ってすべてを包み込むような包容力が必要じゃん?

 あの身体に包容力とか感じられないわ。

 貧乳の女神様とかありえなくね。


「あんたそういうこと言う!? あと! 身体の貧富は関係無いから! 教えあげるけど、私はあんたの言う八百万の一柱だから! しかも割かし偉いの! 転生関連を担当しているの! 偉いからね! 分かる!?」


「あっそう」


「雑っ!? ま、まぁ、いいです。今回は貴方に話があって死ぬはずの貴方をここに飛ばしました。体を見てごらんなさい」


「とっても貧相ですね。唐揚げ食べたほうがいいですよ」


「私じゃなくて自分の体です!」


 言われるがままに自分の体を見てみると、俺は全身血塗れの裸だった。


「イヤン」


「気持ち悪いです」


「黙れ貧乳」


「五月蝿い変態」


 くっ、何も言えねぇ。


「で、なんで俺は裸なんですか。自称女神様」


「自称ではなく正真正銘な女神ですー! こほんっ……とてつもなく幸運な貴方は死ぬ寸前、私という慈悲深くて懐の深さある清潔可憐な女神に拾われたのです。あ、理由は至極簡単な話ですよ。血まみれでグロかったからです」


「うわぁ、お前はそれでも女神様なんですかー?」


「ふふ、これでも女神ですよー」


「服返せやクソ女神」


「もう燃やしたわ裸野郎」


 こいつ絶対女神じゃないだろ。

 こんなのが神様になれる日本ってやっぱりやばい。


「ちっ、んじゃあ話ってのは?」


「最上敦さん、貴方には転生して成し遂げて欲しいことがあるのですよ」


「はぁ……? 具体的には?」


「こことは違うある世界にある学園がありました。その学園は元はその世界でも有名な名門校だったのですが、今では他校に押されつつあり経営破綻寸前です。もう分かりますね、貴方にはそこに入学してなにか実績を残してほしいのです。簡単な話、異世界転生をしろと言っているのですよ」


 はっ?


「はあああああああああ!?」

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