天使の短編置き場
安里 新奈
愛すべき我が彼女
「ゴホッ!・・・ゴホッゴッ!」
昨日の夜からなんだか身体が変だった。
頭がふわふわするし、少し関節も痛い。
(朝には治ってると思ったんだけどな・・・)
「大丈夫か?お前、登校してからフラフラしてるけど」
「これは、大丈夫じゃ無さそうね。養護教諭に車でも出してもらって、帰らせましょ」
確かにこんな状態だったら、誰かに移すわけにもいかない。
「分かったよ。帰りますよ」
しかし一つ、問題があった。
「でもこいつ、一人暮らしだぞ?」
すると、委員長は不敵な笑みを浮かべたまま、俺を送り出した。
(・・・不安だ)
「ただいまー」
学校からほど近い、マンションに着き、俺は誰もいない家の中にそう言った。
「あっ、おかえり~お布団引いといたから」
「ありがと、悪いけどこのまま寝るよ」
・・・あれ?
「どうして、居るんですか!」
いつの間にか、スルーしていたがそこには、現大学生のはずの俺の彼女がいた。
「君のクラスの委員長さんに教えて貰ったんだよ。心配だったから大学サボって来たんだよ」
そういえば委員長とこの人、元部活の先輩後輩だったな。
「朝ごはんまだでしょ?作ったんだけど、食べる?」
「いただきます」
「もう・・・タメ口でいいって言ってるのに」
ちょっとだけ、不機嫌になりながらも彼女はキッチンから朝ごはんを持ってきてくれた。
「じゃーん!風邪っぽいって言ってたから、お粥にしてみました」
ダシの香りがする、食欲は無いはずなのになんだか食欲が湧いてきた気がする。
「食べてもいいですか?」
「ダーメ!」
まさかの言葉が彼女の口から出てきたと思ったら、彼女は俺からスプーンを奪い取りお粥をすくった。
「あーん」
「1人で食べれま「あーん」
どうやら拒否権は無さそうだ。
俺は諦めて食べさせてもらった。
「美味しい?」
「・・・美味しい」
「ふふっ、可愛い」
顔が真っ赤になるのが分かったが、俺は黙って食べさせられ続けた。
あっという間に食べ終わってしまった。
「どうせまだ眠くないでしょ。眠くなるまでお話でもしよっか」
それからしばらく、俺の高校の話や、彼女の大学での出来事を話していた。
年の差が2年もあって、付き合ってからというもの、いつもすれ違っていたような気もしたが気のせいだったのだろう。
かなり長々と話し込んでいたが、彼女は俺の手を握って離さなかった。
「どう?そろそろ眠たくなってきた?」
少しずつ目元が落ちてきて、ウトウトとし始めてしまった。
「私もそろそろ大学戻らないと、お昼は冷蔵庫にあるから食べれるなら食べなよ?」
俺が起き上がると、再び彼女がこっちに近づいてきた。
「おやすみ」
彼女が俺の唇にキスをした。
「・・・風邪うつりますよ」
「それで君が元気になるんだったらいいよ」
そう言って彼女は家を出ていった。
「あーしばらく寝られねぇ」
さっきよりも顔が赤くなっているのが分かった。
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