第21話
わたしがびっくりすること。
その日は意外に早くやって来た。
朝にお部屋に戻ったところで、お兄さんがわたしにブラッシングをしてくれる。
あれ?今日はどこかにお出かけするの?
「今日はお客さんが来るらしいやで。」
いつものように壁さんがニヤニヤしながら言う。お客さんってどんな用事かなあ。
「まあ、来ればわかるやで。」
相変わらず壁さんはすぐに答えを言わない。じきにわかるからいいかとも思う。
そして庭に出てしばらくすると、お客さんがやって来た。
たくさんのお客さんが、みんなうれしそうにわたしを見てる。
中にはわたしの名前を呼んだり、わたしに似てるぬいぐるみを持ってる人も。
「どや、びっくりしたやろ?みんなシュシュに会いに来てくれたんやで。」
壁さんは目を細めて言う。
うん、びっくりした。
……わたしの部屋やこの庭にある「カメラ」の向こうで、この人たちはずっとわたしを見ていてくれたんだと、壁さんが教えてくれた。
「この人たちだけやないで。もっとたくさんの人がシュシュを見てくれてるんやで。」
壁さんは続ける。
「みんなシュシュがええ仔を産んでくれるよう応援してるんやで。この人たちの期待には応えたいやんな。」
そうだよねえ。頑張らなくちゃいけないな。
お客さんたちはわたしと写真を撮ったり、わたしの部屋も見てくれた。
中には壁さんに挨拶する人もいて、壁さんも返事してた。壁さんって有名だったのね。
「いやいや、シュシュに蹴られてるところをみんなに見られてただけやで。」
あら、わたし凶暴みたいに思われてるのかな?
「単純に腹減って蹴ってるだけって思ってるみたいやで。良かったなあ。」
お客さんが帰った後、わたしが壁を思いっきり蹴り上げたのも当然だよね。
それにしても、あれだけたくさんの人がわたしを見てくれてるなんて思わなかったな。
頑張っていいお母さんにならなきゃね。
そのためには……、まずはご飯かな。
わたし、サラブレッド。
名前はシュシュブリーズ。
頑張ろうって心の底から思った。
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