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「でも松坂さんはもうすでに立派な背中だと思いますけれど?」
「やめてよ、まだまだなんだから」
「またまた御謙遜を」
「そんなんじゃないって」
くく、と続けて微笑んだ松坂さんは、先ほどよりも少しだけ元気を取り戻しているように思えた。それが店に飲みに来てくれたからだとしたら嬉しいことこの上ない。
「仕事終わりにぐったり疲れているようではね、まだまだだよ」
「そんなこと」
「あるんだって。俺の師匠はこんなんじゃなくて、もっといつでもパワフルで元気で、格好良かったから。俺なんてまだまだだよ」
十分格好いいけどなぁ、なんて。他人が思うのと自分が思うのとでは違うのが当たり前か。俺だってそうだし。
「それではそんな松坂さんにピッタリの一杯をお作りしましょう」
「ピッタリの一杯?」
「しばらくお待ちくださいませ」
バックバーから選んだ三種類をシェーカーに入れてシェークする。し終ったら足のついた深めのグラスへ静かに注ぎ込む。満たされたのは淡い青のカクテルだ。
「ブルーマンデーでございます」
「ブルーマンデー?」
「爽やかなカクテルですよ。どうぞ飲み干してブルーな月曜日を飲み込んでしまって下さい」
「月曜日を飲み込むの?」
「そう考えると、ちょっと楽しくないですか?」
「・・・楽しいかも」
そしてつかの間の休みを終えたらまた仕事の日々だ。でもなんだかんだいって嫌じゃない。そんな日々の繰り返しが、いつの間にか愛おしくなっているんだよなぁ。
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