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こびと

手で話す



「あ、おはようジェイソン!」


私がそう言って笑うと、ジェイソンはふわりと笑う。


「(おはよう、ケルシー)」


手話にそれっぽく発音している、難聴者によくある話し方を交えて挨拶を返してくれるジェイソン。


ジェイソンは生まれつきの混合性難聴で、音は補聴器をつけても一切聴こえない。


だから、会話は手話か筆談。


でも、ジェイソンは唇を見て話していることを察することが出来る。


私がジェイソンのその力に気づいたのは10歳の頃だった。


全く聴こえていないはずのクラスの話を、ジェイソンが既に理解していたから。


ジェイソンは「何となく、わかるだけ」なんて話していたけど、私はかなり驚いていた。


「(ケルシー、遅刻するよ)」


私の肩を軽く叩いて、そう話すジェイソンに促され、学校へ向かう。


授業中、私は先生の話を手話でジェイソンに伝えたり、自分のノートを取ったりしながら受けるのが何時もの光景。


授業が終われば、そそくさと帰り支度を済ませてジェイソンと色々話しながら帰る。


そして、帰りがてらにカフェで休憩する事にした。


カフェに入り、椅子に座ってメニューを見る。


私は紅茶を、ジェイソンはジュースを頼んだ。


店員は、ジェイソンが難聴者だとは気づかなかったと思う。


恐らく、指を指したり頷いたりしてたから、喋らないタイプの人って思われたんだと思う。


しばらくして飲み物がくれば、私達は飲みながら手話で会話して盛り上がっていた。


飲み終えて外に出、時間もあるので辺りを散策する事にした。

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