RAINY DAY
ぺむぺむ
おとなこども
私の名前は、橘 美波。
一応、地元の小学校で小学二年生をやってる。でも最近、担任の鈴木が私の欠点を見つけてはケチつけてくるから、むかつく。その鈴木は二十代の独身で、黒縁眼鏡をかけた、学生時代は勉強だけが取り柄の陰キャだったはず。
「美波ちゃん、だめだと思うなら、ちゃんとしよう。このままじゃろくな大人にならないよ」
ほんと、ばかばかしい。ろくな大人にならない、が鈴木の口癖だけど、鈴木もちゃんとした大人だとは言えない。だって、クラスの女子の間で噂になっていたもん。
"鈴木がなっちゃんの体を触ってた" って。
なっちゃんは、同じクラスの小柄でおとなしい性格の奈緒ちゃんのことで、放課後、噂好きの佐奈ちゃんが忘れ物をして教室に戻ると、鈴木が奈緒ちゃんの脚を触ったり、足の匂いを嗅いだりしているのを見てしまったらしい。その時、奈緒ちゃんは怯えていたが、言い出せるような性格ではないのでされっぱなしだったという。怖くなった佐奈ちゃんは急いで家に帰り、誰にも言い出せずに翌日、クラス委員の菜名ちゃんに報告して噂はクラス中に広まった。
「大丈夫だから、声出さないんだよ」
眼鏡の奥から覗く小さな目が、不気味に歪む。白い唇から剥き出しの黄ばんだ出っ歯と、喋るたびに異臭のする口内。ニキビ跡のある、荒れた肌。
鈴木はハァハァと息を荒らしながら、ベルトとネクタイを外し、パンツ一丁になる。目を逸らしたくなるほどの胸毛と、鼻をつく汗の臭い。思わず鼻をつまむと、
「いいね、もっと僕に嫌な顔をして。罵倒して! 殴って!」
鈴木はさらに興奮したように言い、教卓にあったボールペンを手渡ししてき、
「これを僕に刺して。思い切り!」
そう言って床に横たわる。戸惑っていると、鈴木は「早く!」と怒鳴り声を上げたので私は遠慮なく背中にボールペンを何度も何度も突き刺す。最初は軽く刺したが、足りなかったようなので血が出るまで深く刺す。その度に喘ぎ声をあげ、
「気持ちいい! 気持ちいいよ、美波! 今度は首を締めて」
鈴木は自分の鞄から細い縄を取り出して、私に渡す。今度こそは人殺しにもなりかねないため、首を横に振ると、鈴木は一瞬で真顔に戻り、
「美波はさ……もっと強気でいないと。僕の理想通りにやってよ。じゃないと」
鈴木は一拍子置き、聞いたこともないような低いトーンで、
「殺すよ」
「わかりました」
私は鈴木を仰向けに寝かせ、胸の上に乗り、鈴木の首に縄を巻く。また興奮した面持ちの鈴木の顔を上から眺めながら締める手に力を入れる。そうとはいっても所詮、小学生女子の力なので死ぬほど締められるわけもなく。
「先生、一番興奮するのはやっぱり、ガムテープですよね」
私はそう言い、鈴木の机に置いてあったガムテープを手に取り、再度鈴木に馬乗りになる。驚いていたが、さすがマゾヒスト。すぐに対応し、やられる準備をしている。
私は鈴木の四肢をガムテープでぐるぐる巻にし、動けないようにしてから、鈴木の鼻の穴に丸めたガムテープを二つ突っ込んだ。その上からさらにガムテープを貼り付け、言う。
「"ろくな大人にならない"って、まさにこの姿のことですね。残念。……最後に何か言いたいことある?」
鈴木は慌てた様子で体を動かし、いまさら声量を気にして言った。
「今すぐテープを外さないと、今度こそ殺すぞ! 早く!」
「嫌だね」
私はそう言ってガムテープを口にも貼る。そのガムテープをもとの場所に戻し、シャツの第二ボタンを外して、髪をグチャグチャに掻き回す。
教師たちは都合の悪い事実を隠蔽しようとする性質なので、こういう公にしなきゃいけないことは親か、利害関係のない大人に頼むのが一番である。
私はその乱れた服装のまま家に帰り、事前に準備しておいた涙を、母親の前で垂れ流しにする。わざと冷静に泣いて、状況説明するのも効果的だ。
「お母さん、鈴木先生がね、いきなり服をね……」
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