2-8 結果発表

 どうも焔です。現在日影の拳がインドラの腹を殴ったところです。


 インドラと日影の二人は動かない。

 時が止まったかのように日影の拳がインドラの黄金の鎧をまとった腹を殴ったままの状態だ。


「見事だ。まさかインド神話最強の鎧が負けるとはな」


 最初に喋ったのはインドラだった、彼の言葉が終わるとほぼ同時に彼がまとっていた黄金の鎧は砕け日影の拳の形に凹んだ腹が出てくるまた放出されていた稲妻は消えインドラからは弱弱しい威圧しか出ていない。


「私とて最高神の一角、ましてや私のホームグラウンドだ。この世界なら地球の神で私に勝てる奴はほぼ居ない、そんな中私の一撃を食らって意識があるだけ素晴らしいと思うぞ。」


 日影は勝利より不利な状態でも一撃を耐えたインドラを讃えた。

 実際イントラやシヴァの神格は地球では最高神かもしれないがこの世界ではほぼ知られていない。

 神格とは人の認知度や畏怖されている度合いにより大きく左右される。

 日影のようにほぼ純正のこの世界の神と異国の神では天と地ほどの差が出てしまう。


「純粋な讃称として受け取っておこう、焔よ今回汝は不意打ちした挙句傍観に徹して従者とイチャイチャしてただけであろう。すまぬが回復してはくれぬか」


 先ほどまであった雷光は消え、シヴァの状態に戻っていた


「本当は嫌だと言いたいところだが神酒の借りがあるから回復させてやるよ」


 俺は回復魔法Lv.9のヒキュールを発動させる。

 日影の拳跡以外の傷が消えさっきまで弱弱しかった威圧は初めて会った時ぐらいまで回復していた。

 謎基準で分かりにくいと思うから順位とするとインドラ状態>>|越えられない壁|>>最初にあったシヴァ>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>戦闘後って感じだ。

 戦闘後ならアスでも倒せるぐらい弱弱しかった。


「神酒?知らんな、そんなことより挑戦者焔よ汝をティーシ宮攻略者と認め、シヴァの試練の攻略者として認める。」


 シヴァの言葉とともに一枚の紙が落ちてくる

 その紙には

 タイトル: 1:子の化身 シヴァの試練

 挑戦者:日影 焔 アス

 勝利条件1:シヴァとの戦闘に勝利する

 敗北条件:挑戦者の死亡


 只今 1:子の化身 シヴァの試練のクリアを確認しました。

 24の試練クリアのため報酬として子の神格を贈呈します。


『「能力:子」を取得しました。』



 鑑定結果

 名前 子

 分類 能力

 解説 24の中の1である子の神格及び一部能力の取得

 特殊効果 俊敏性上昇 雷魔法威力上昇


「よかった、これでシヴァの使役権を手に入れたとか言われたら速攻で破棄してたわ」


 アスの時のことを思い出し使役権が手に入る可能性に恐怖していたがそんな様子がなくて安心した。


「誰か汝の下につくものか、なにされるか分かったものじゃないからなその代りいいものをやろう」


 シヴァの手に光の球が出来、俺に向かって飛んでくる。

 じっとしていると球が当たり吸収される。


『「シヴァ神の試練攻略者(仮)」が「シヴァ神の試練突破者」に変化しました。

「スキル:破壊」が「能力:子」に統合されました。

「インド神の神格を手に入れました。」』


「あの光の球は俺の神格の一部だ。前回の施しの時に中途半端に手に入った神格が今ので完全なものになったはずだ。」

「あぁインド神の神格なんて大それたものになったぜ」


 一般男子高校生が持っていい神格ではないと思うが貰えるものはもらおう


「それはそうだろう俺というかインドラの神格はインド神すべてと等しいからな」


 シヴァが自慢げに語るがあながち間違っていないところが悔しいのは何でだろう。

 インドラはバラモン教の時代では神々の中心ともいえる人気だったがヒンドゥー教の時代になるにつれ神々の中心をヴィシュヌやシヴァに譲るがその時大半の神がインドラの神格の一部を貰っている。

 その為今有名なインド神たちのほとんどはインドラに頭が上がらないのだ。


「へぇ~そんな神の王ともいえるものが子愛しさに騙し英雄を殺し、いろいろな女と関係を作って呪い吹っかけられ、敵対者に敗北して天界を度々追放される駄神になるとはなぁ」


 俺の皮肉に苦虫を噛んだ顔になる


「うるせぇ若気の至りってやつだよ、女関係や敵対者に負けるのはどうでもいいがカルナの話だけは辞めてくれあれはインド神話最大の汚点だから」


 そう語ったシヴァはいつの間にかインドラの面が強くなったのか微小ながら電気を放出している


「俺も彼奴がアルジュナと同じ母親から生まれたと知っていたらああならない様に出来たが如何せんあの女はいろいろな神との間に子どもを作っていたからな。正直今でもカルナのことは悔いている。あそこまで優しい男はいなかった」


 カルナとはインドの叙事詩「マハーバーラタ」に出てくる大英雄アルジュナの宿敵とされている不死身の英雄だ。

 アルジュナと同じ母・クンティーから生まれたのだが未婚での出産を恐れたクンティーは生まれたばかりのカルナを箱に入れ川に流した。

 カルナは生まれつき父スーリアと同じ黄金の鎧を身に纏っていた。

 カルナはこの鎧がある限り不死身であったが、アルジュナと戦う前にバラモンに化けたインドラによって鎧を奪われてしまう。

 その後アルジュナとの戦いでカルナは命を落としてしまう。


「マハーバーラタは俺も読んだことがあるから分かるがカルナの不遇性と人間としての完成度はすごいと思うぞ」


「まぁそんな昔の黒歴史は置いとこうというかもう思い出したくないのだ。今ですら自らを殺したくなるほどの事だからな」


 インドラは自らの怒りで拳を地面にぶつける。

 力を一点にしたのだろう周りへの被害がほぼないがインドラの腕が砕け潰れ変形する。


「カルナの真実を知り幾度となく自らの核を傷つけたが全く怒りは収まらず虚しさしか残らなかった」


 日影と激戦を繰り広げていたものとは思えないほど疲れ切った人間のような顔をするインドラ


「はぁ何で俺の関わるやつらは全員自虐機能でも持ってるのか??馬鹿じゃねぇの過去犯した罪を贖うことなんざぁ何して出来ねぇんだよふざけんな。そんなことで自虐してる暇があったら新しい神でも作るために女とヤッテろ駄神」


 俺は頭をガシガシ掻きながらインドラに言い放つ


「普通なら殺すところだが今回だけはありがとうと言っておこう」


 インドラは今までと違い何かすっきりしたような顔をしている


「簡単だが割り切ることができたみたいだな、なら今回手に入れたものの解説よろ」

「それは私の仕事だからまた後で教えてあげるね」


 今まで影だった日影がひょっこりと出てくる


「なら後でご褒美と一緒に教えてもらいますかな」


 日影の頭を撫でてやると目を細めゴロゴロ言っている…猫かよ


「じゃぁあとは聞きたいことも無いしダンジョン完全攻略ってことで地上に帰りますか」

「そうか、俺の役目も終わったみたいだし最後の仕事としてお前らを地上に戻してやるよ」


 そんな話をしていると足元に魔方陣が現れる


「じゃあなインドラ、死にかけたけど結構面白かったぜ」

「そうかそれなら良かったぜ、俺も久しぶりに楽しませてもらったぜじゃあな」


 別れの挨拶とともに視界がまばゆい光に包まれ目を瞑る。

 程なくしてさっきとは違う光に目を開くと地上のティーシ宮の入り口前に飛ばされていた


「ふぅ久しぶりの地上だが何日間ダンジョンにいたんだ俺ら」

「シヴァと出会って戦いが終わるまでで約1日、落下後肉体再生で3日、訓練で約2日ぐらいだから約1週間だと思えばいいよ」


 一週間ずっと洞窟にいたのか、そういえば一週間味のしない干し肉ややたら塩っ辛い煮干し食ってないなぁ、まあ半分ぐらいは寝てたり、気絶してたりと意識が無いんですけどね。

 意識し始めたらおいしい料理が食べたくなってきた。


「日影、お腹が空いたんだが近くにある街って王都以外にある??」


 ティーシ宮のダンジョンに着くまでの道にはそういった場所は無かった。


「う~ん分からないなぁ」

「しゃ~ない一回王都に戻るか うわぁあいつ等に会いたくねぇなぁ」


 俺は王都にいるであろう香蓮達に逢わないことを願ながら王都えの帰路に着く

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