第28話 お正月

 新年明けましておめでとうございまああああああああっす!!!

 年が明けたよ!!

 私元気だよ!!

 みんな元気ぃ!?


 よっしゃ行くぞお正月ぅ!!


「は・つ・も・う・で!!行くよ行くよ行くよぉ!!レツゴー!!神社ぁ!!」


 と、気合いマックスな私に対して、他のみんなが何故か一歩引いた位置にいる。


「……しーくいさんはどうしたんだ?テンションがおかしいんだが」

「寝不足だとあんな感じになるのよ」

「寝不足じゃないよ!!昨日寝てないだけだから!!」


 どうしてみんな結局寝不足じゃんって感じの顔してるの!!

 年末年始の特番見てたんだから仕方無いじゃん!!


「てな訳でおめかしタイムだ!!着付けるぞおらぁん!!」

「うわぁ!しーくいさんが襲ってきた!」


 失礼な!!

 取っ捕まえて着物を着せてあげるだけだから!!


 1時間後!!


 うちの寮のアニマルガール達はめでたくみんな着物姿となった。


「しーくいさん、これ動き辛いよ」

「運動するための服じゃないからね。でも、ほらとってもかわいいよ!」


 カメラを構えて連写!!

 カシャシャシャシャ!!


「そ、そうかなー?えへへ……」


 さすがインパラ、チョロい。


「ねぇ、しーくいさん。わたし達はどう?」

「みんなばっちし似合ってるよ!」

「じゃあ、誰が一番似合ってるかしら?」


 すっごい意地悪な質問!!

 ピューマは赤い着物の色に茶色の髪が映えて綺麗だし、カワラバトは緑色の着物でかわいい感じに仕上がってるし、ダチョウは落ち着いた大人の雰囲気も相まってすごいきらびやかだし、グリズリーも普段の野性味溢れる姿からのギャップが魅力的だし……


「みんな違ってみんな良い!オンリーワンなんだよ!!」

「逃げたな」

「逃げたわね」

「しーくいさんなら逃げますよね」

「伊達巻き、かまぼこ、黒豆、伊勢エビ──」


 逃げた逃げたと言うグリズリー、ピューマ、ダチョウに対して、カワラバトは雑誌でお節のメニューを見て呪文のように唱えていた。

 相変わらず自分のペースで生きている。

 伊勢エビは高いから諦めてね!


「よし!!いざ、神社へ!!」


 てくてく歩いて行って神社が見えてくる。

 まだ、ジャパリパークの職員しか居ないけど、それでも中々盛況である。

 ジャパリパークの職員の数は全て含めると大企業にも匹敵するくらい多いとか言ってたっけ。


 正月に帰ってる人も多い筈なんだけど、それでもこれだけ人が残ってるんだねぇ。


 さぁ、御参りのプロに任せたまえ!!

 前にギンギツネに教えた通りに5人に御参りの方法を伝授する。


「インパラ、先に礼」

「あっ……」


 カワラバトがインパラに間違いを指摘してる。

 カワラバトって意外と頭が良いんだよね。

 ただ、肝心なところでぼーっとしてるから、ドジを踏みやすい。


「神様、ウチをニワトリにしてください」

「え?」


 隣のインパラがカワラバトの発言に思わず声が出た。


 まだ、諦めてなかったんかい!!

 何がそんなにカワラバトをニワトリに駆り立てるの!?

 カワラバトが不満なの!?

 私、カワラバトの考えてること全然分かんないのん!!


 願いを口に出して言ったのはカワラバトだけで、他のみんなは黙って願い事をする。

 何を願ったかは敢えて聞かない。



「じゃあ、次はおみくじ引いていこう」

「おみくじ楽しみです!」


 占いの中でおみくじが好きなダチョウはむしろこっちをメインに考えてたみたいで、御参りが済んだらそそくさとおみくじの列の方へ行ってしまった。


 それにしても……おみくじの列が御参りの列より長いような気がする……

 て言うか、最前列になんか人だかりが出来てない?


 くっ!

 身長が低いからジャンプしても前が良く見えない!


「持ち上げて欲しい?」

「持ち上げないで!」


 持ち上げられると負けた気がするから!


 長い間並んで最前列に来て、どうしておみくじの列が長いのかを理解した。


「ギンギツネ!?」

「明けましておめでとう!」


 ギンギツネがおみくじの売り子をしていた。

 しかも、ただの売り子じゃない!!

 王道に王道を重ねた王道の極みにあるような格好をしている!!

 キツネ巫女だ!!

 キツネ巫女だ!!

 大事でヤバい事だからたくさん言うよ!!

 キツネ巫女だ!!


「どうして、ここで売り子なんてしてるの?」

「神社の人に声を掛けられたのよ。ここでこの格好で売り子してくれたら、たくさんバイト代あげるって」


 所詮、世の中は金か……

 買い物する時に不安で私の方を振り返ってたギンギツネはもう居ないのね……

 まぁ、ギンギツネは気さくでコミュ力が高いからね。

 ちょくちょく居住区にやって来ては職員と交流してる的な話も聞いてるよ。


 ところでキツネを奉る神社でキツネを働かせて良いのかな?

 バチが当たらない?

 むしろ、逆に何かご利益があったりするの?


 うーん、良く分かんない!


 ここで話し込むと後ろで待ってる人達が迷惑だからさっさと引いちゃおう。

 そして、周囲を囲んでる野郎共!!

 後で追い払うからね!!


「えい」


 おみくじの箱から紙を一枚引き抜く。

 さて、私の今年の運勢は……


 吉


 うん、超普通!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る