第26話 サンタの潜入ミッション

 さて、世のサンタさんが子供達のプレゼントを調べるのに使うかしこい方法とは何なのか?


「考えることはみんな同じだねぇ」


 私の手の中にはサンタさんへのお手紙が握られている。

 今回はジャパリパークの郵便局の人にお手伝いをしてもらった。

 そもそも、カワラバトに色々吹き込んだ郵便局が巻いた種なんだけどね。


 小さい時に私も書いたっけ。


 さて、みんなはなんて書いたのかな?


 まずはカワラバト!

“まんまるにわとりクッション”

 またニワトリですか。

 好きだねぇ……


 次はグリズリー。

 何度か消して書いたような後があるから結構迷ったみたい。

“クリスマスツリー・ハニー”

 ハチミツ……だよね?

 聞いたことがないけど実在するのかな?

 昆虫は兄貴の専門だから良くわからないんだよねー。

 調べてみたら高級ハチミツだった。

 ハチミツばっか食べてると、その内毛の色が黄色になっちゃうよ?


 ダチョウは何かな?

“タロットカード”

 ご丁寧に手紙の最後に“しーくいんさん、よろしくお願いします”と書かれてる。

 ダチョウにはサンタさんの件はバレてたみたい。


 インパラのご希望は?

“暖かいジャージ”

 思い付かなかったのかな?

 インパラは何より身体を動かすのが好きだから、思いっきり走れる運動場とかの方が希望なのかもね。

 さすがにサンタさんでもそれは無理って分かっちゃうか。


 最後にピューマのは……

“しーくいんさんのマフラー”

 同じデザインのマフラーが欲しいって事で良いんだよね?

 最近になってピューマが私とお揃いの物を欲しがるようになってきたような気がする。


 まぁ、これでみんなが欲しいものは分かったから後はプレゼントを用意するだけ!

 早速手配しよう!



 そしてクリスマス・イブの深夜……


「イツキサンタ登場!」


 サンタクロースのコスプレに身を包んだ私の登場だ!!

 巷で流行りなミニスカサンタではなく、オーソドックスな長ズボン履いた普通のサンタコス!

 真っ白な口髭もしっかり完備して、お腹にはクッションを詰めてサンタの大きなお腹も再現!

 肩にはみんなへのプレゼントを入れた大きな布袋を持っていざ潜入ミッション!!

 何処から見ても今の私は不審者だ!!


 私は抜き足差し足忍び足で音を立てないようにゆっくりとみんなの部屋の中へ入っていく。

 枕元じゃなくてクリスマスツリーの下にあるって設定の方が楽だったかも……


 なんて思いながら最初に侵入したのはカワラバトの部屋。

 バイト代でちょくちょく買っているニワトリグッズが部屋に並んでいる。

 特に人形なんかの柔らかいものは部屋の隅っこでまるで鳥の巣のように積まれている。

 たぶん、暇な1日はあそこで過ごしてると思う。

 このハト成分が欠片もない部屋がハトの部屋って分かるのは何人くらいだろう……


 次はグリズリーの部屋。


 相変わらずジムみたいな部屋。

 でも、器具とかはかなり丁寧に使ってるみたいで、壊れたりと言った報告はまだない。

 そして、前と違うのは部屋にハチミツの瓶が置かれている棚が追加されたこと。

 これがグリズリーの一番の宝物なので、勝手に触れば私でも怒られる。


 おし!

 次行こう!


 ピューマの部屋。

 若干散らかってるけど普通のお部屋である。

 爪研ぎ用の丸太も大分使い込まれていて、既に元の大きさから二回り程小さくなっている。

 そろそろ変え時かな?


 そろりそろりと壁の方を向いて寝ているピューマの枕元にそっとプレゼントを置いて立ち去った。

 部屋を出る瞬間もそりと布団が動いたような気がする。


 気を取り直してインパラの部屋!!

 私はここが一番の難所だと思います。

 散らかり放題の部屋を通ってインパラのベッドまで行くのは凄い難しい上に、インパラはとても眠りが浅い。

 ちょっとの衝撃で目を覚ましちゃう。


 さて、最後の難関に挑みますかぃ!!

 私はペンライトの僅かな明かりを頼りに床の上にある散乱物の間を抜けながらインパラへと近付く。


 後もう少し……

 そして、細心の注意を払いながらインパラへ近付いていた筈なのに、不意に何か丸いものを踏んづけてバランスを崩す。


 ま、不味い!!


 タン……


「!!」


 右手を床についた音でインパラがガバッと起き上がる。

 私は床を転がって素早くインパラのベッドの下に潜り込んで息を殺す。


「……ふぁ」


 危険はないと判断したインパラの欠伸をする声が聞こえてから少しすると、スースーと寝息が聞こえてくる。


 あ、危なかったー。

 身体が小さくて助かったわ。


 トラブルはあったけど、無事インパラの枕元にプレゼントを置いた私は最後の部屋へ向かう。


 ダチョウの部屋。


「お疲れ様です」


 ダチョウはテーブルに飲み物を用意して私の事を待ち構えていた。

 まぁ、始めからバレてたっぽいからねぇ。

 私は座布団に座ってテーブルの上の飲み物を手にする。


「ありがとね。ところで質問なんだけど、ダチョウは何時からサンタさんはいないって気付いていたの?」

「しーくいんさんがサンタさんはいるよって嘘を吐いた時ですね」

「うっ……そこからなのね」

「知ってますか?しーくいんさんって嘘を吐く時に少し瞬きが多くなるんですよ」

「え?マジ?」


 気が付かなかった。

 まさか、私にそんな癖があったなんて……


「フフ……一応占い師ですからね。日々観察眼を鍛えています」

「恐れ入りました。じゃあ、そんなダチョウにメリークリスマス!」


 私は袋からタロットカードを取り出してダチョウに手渡す。


「ありがとうございます。サンタさん」


 ダチョウの笑顔で私にお礼を告げた。

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