第23話 路上の占い師

 セントラルエリアの居住区の片隅でひっそりと佇むアニマルガールがいる。


 自称見習い占い師ダチョウ。

 テーブルに金メッキの卵を乗せて、今日も人生に迷える人々に道を示している……かもしれない。


 ゴールドコース一回三千円、シルバーコース一回五百円。

 コースの中身はゴールドコースが水晶占いでシルバーコースがおみくじ。


 見掛けたら運試しでシルバーコースをやっていく人がそこそこいるっぽい。

 反面、ゴールドコースをやる人は滅多にいないけど、ダチョウは水晶占いよりおみくじの方が好きなので対して気にしていないみたい。


 そんなダチョウですが、ダチョウの占いはそこそこ当たると評判なのです。


 最近起きた事だと、おみくじ用の銀の卵から縁起が悪いからと入れた覚えのない大凶を引いたお客さんが危うく死に掛けた事かな。

 ラッキーアイテムのビー玉で間一髪助かったらしい。


 ちなみに入れた覚えの無い大凶が入ってた原因はインパラがダチョウが入れ忘れたものだと思って卵に入れたから。


 さて、そんな当たると評判のダチョウへ珍しい客がやってきた。


「みんな、なかなか私をかしこいと認めなくて困っているのです。何か良い方法がないか占って欲しいのです。ゴールドで」


 そう言って三千円を渡したのはアフリカオオコノハズクのコノハちゃんだった。


「改善点は多々ありますが、まずは幼い口調を直してみることをオススメします」


 料金を受け取ったダチョウは水晶代わりに使ってる金の卵を見ることなくコノハちゃんに笑顔で的確なアドバイスをする。


「わたしはわたしのままかしこいと認められたいのです!」


 そりゃ無理ってもんよ。

 コノハちゃんって見た目も幼いし言葉遣いも幼いしでどうも子供にしか見えないんだよね。

 天才なんじゃないかってレベルで頭は良いんだけどね……


 まぁ、容姿に関しては私も他人の事を言えた義理じゃないけど!!


「とりあえず、占うのです」

「分かりました」


 ダチョウは金の卵を覗き込み、ぐぬぬーと未来を見るために念を送る。


「これは……壊れた図書館……ちょいした食材で女の子に作らせたカレーを貪る姿が見えます……お皿に付いたルーを舐めとる様は正しく……カレーの鳥・白米」

「どういうことなのですか!?」


 私も同じ気持ち!!

 確かにコノハちゃんは白いけど、カレーの鳥・白米って何?

 相方にカレーの鳥・ルーでも居るの?


 カレーのこと考えてたらカレーを食べたくなって来ちゃった。

 よし!

 今日の晩ご飯はカレーだ!


「ツッコミ処が有り過ぎるのです!わたしはカレーの鳥呼ばわりされるほどカレーは好きではないのです!それにちょいとは何なのですか?もしやせっとーの事を言ってるなら、それは絶対わたしではないのです!わたしは良い子なので!」


 コノハちゃんは泥棒になってカレーを貪ると言う散々な占い結果に大層ご立腹のようだ。

 頭の翼が扇状に広がってフクロウの威嚇のポーズになっている。


「当たるも八卦、当たらぬも八卦ですから」


 占いを信じ過ぎちゃうのもアレだしねぇ。


「そんなこと分かってるので、もっとまともな結果を寄越すのです!」


 膨れっ面のコノハちゃんの前でダチョウは再び金の卵と向き合う。


 ケッハ・モ・ルタア

 ケッハ・モ・ヌラタア

 イナラウ・シホ・デ・ザイセ

 キェエエエエエエイ!!


「……その呪文は何なのですか」

「何となく占い師っぽくありませんか?」


 と、謎の呪文はさて置いてコノハちゃんに対する占い結果が出たみたい。


「日々研鑽を積むことにより、何れは博士と呼ばれフレンズ達からかしこいと認められるようになるでしょう」

「そうです。そういう結果が欲しかったのですよ」


 うんうんと頷くコノハちゃんだったが、何か引っ掛かったようで首を捻り始めた。


「ちょっと待つのです。フレンズ?それって友人間からしかかしこいと認められないと言うことじゃないのですか!?わたしはみんなに認められたいのですよ!」

「ならば、更なる高みを目指すしかありません。よりかしこい人との出会いがあなたの未来を明るくするでしょう」


 よりかしこい人か……

 まぁ、私じゃ力不足になるかなって感じていたし、占いの結果も妥当ってところかな。


 やっぱり、ジャパリパークにアニマルガール達の為の学校を設置した方が良いと思う。


 例えば、私立ジャパリ女学園みたいな小学校からから大学まで兼任するような大きな学校を……


 って、まずはそんな予算があるかどうかが問題か。


 とにもかくにもダチョウに占いをしてもらったコノハちゃんがやってきたのは、飼育員である私のところだった。


「と、言うわけでかしこい人を紹介して欲しいのですよ」

「かしこい人ねぇ……」


 私を基準にするとみんなかしこい人ばかりだから、誰を紹介しても良いような気がしてきた。


 あ、そう言えば私の周りで飛びっ切り頭が良さそうな人が居たっけ。


「コノハちゃん、博士になるんだったらまずは助手から始めてみない?」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る