第20話 キツネの御参り
まずは水舎のところで手を清めます。
柄杓を右手に持って水を汲んで左手を洗い、次に左手で柄杓を持って右手を洗う。
洗った後は右手で柄杓を持って左手に水を受けて口に水を含んで濯ぐ。
「はい、ギンギツネもやってみよう」
「結構、複雑なのね」
「そりゃ神様も願いを叶える人を厳選したいからね!」
さすが物覚えが良い組。
一度しかやって見せてないけどギンギツネは正確に私の真似をしてみせた。
「これで良い?」
「オケだよ!次はあっちの建物」
まずは賽銭箱の前に立ってお賽銭を賽銭箱の中に入れて鈴を鳴らす。
次に深いお辞儀を二回やって、両手を胸の高さくらいに持ってて二回拍手。
最後に両手を降ろして深いお辞儀をして願い事をする。
「しーくいんさん、かなりやり慣れてるわね」
「自慢じゃないけど私は御参りのプロだからね。7月は特に熱心に御参りしてたから」
願い事の内容は……
赤点はイヤだ赤点はいやだ赤点は嫌だ赤点は嫌です赤点は勘弁赤点はやめて補習は嫌だ赤点は嫌なの音頭赤点はイヤじゃああああああああ!!
消えないで!
私のサマータイムぅ!
……ホント、自慢できないわ。
「じゃあ、一緒にやってみよっか。私も願掛けしたいことがあるし」
私とギンギツネは仲良く並んで神社に御参りをする。
神社とキツネか……
巫女服着せて更なる王道を極めてみても良いかも。
絶対似合うと思うんだよね~
おっと、いけない!
邪念を振り払って心を無にするのだ!
「────」
「「!!」」
私とギンギツネはほぼ同時に背後を振り返った。
「ギンギツネ、今誰かの声……」
「しーくいんさんも聞こえたのね」
「言ってる内容は分からなかったけ……ど……?」
声がした辺りのところへ目を向けるとサンドスターが集まっていて、心無しか人型になっているように見える。
私はそれが気になってサンドスターが集まっているところへ手を伸ばすと、風が吹いてもいないのに何処かへ飛んで消えてしまった。
ギンギツネと私は神社を去った。
怪奇現象と言えばそうなのかもしれないけど、不思議と怖いと言う気持ちにはならなかった。
カコさんみたいな研究者だったら何か理由を見付けてくれるかもしれないけど、私にはただの不思議な出来事としか見えなかった。
サンドスターには未知の部分がたくさんあるって聞くけど、さっきのもサンドスターの未知の部分になるのかな?
「ギンギツネはあの時なんてお願いしたの?」
「私はおいなりさまに会いたいってお願いしたわ。そうしたら、もう少し待っててって言われたのよね」
私には聞こえなかったけど、ギンギツネには言ってる内容が聞こえたみたい。
ギンギツネがアニマルガールだから聞こえたのか、それとも私の中に邪念が混じってたせいで聞こえなかったのか……
そう言えば、お化けなんかも純粋な子供にしか見えないとか言うし、純粋なアニマルガールもお化けが見えるのかも。
さすがに神様相手にお化け扱いは可愛そうかな?
「しーくいんさんはなんてお願いしたの?」
「私はパークのみんながずっと笑顔で居られますようにって……聞き届けてくれたかな?」
「きっと聞き届けてくれたわよ」
あれがお稲荷さまだったのかは私には分からない。
だけど、もしもお稲荷さまだったのだとしたら、ジャパリパークが上手く行くように見守っていて欲しいかな。
「あれ?」
ギンギツネがまたすっとんきょうな声を上げる。
「いなり寿司が一つ減ってるわ!」
「へ?いや、まさか……うわっ!マジで減ってる!」
どうやら、お稲荷さまは大変食意地の張った神様のようです。
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