第18話 未来の後輩その3

 翌日ぅ!!

 バスで行くセントラルエリアサバンナ地方の旅。


「昨日も言ってたと思うけど、このジャパリパークは気候制御システムによって、様々な気候が再現されてます。今いるのはセントラルエリアサバンナ地方。アフリカのサバンナを再現した区画です。今日は皆さんに動物観察をしてもらいます」


 たぶん、ジャパリパークで一番重要な仕事。

 なんと言っても野生の姿を見られるサファリの管理は大変だからね。


 セントラルエリアって有名な動物が見られる地方で固めてあるんだよね。

 珍しい動物が見たいなら他のエリアに行った方が良いかも。


 ここでインターンシップの学生らしく質問の手が上がった。


「この気候制御システムってジャパリパーク以外では導入出来ないんですか?砂漠の緑化や台風等の災害防止に役立ちそうと思うんですが……」

「え、えーと」

『気候制御システムハジャパリパークノヨウニ大気中ノサンドスター濃度ガ高クナイト機能シナイヨ。ダカラ、サンドスター濃度ノ薄イ一般的ナ地域デノ運用ハ課題ガ多クテマダ出来ナインダ』

「そうそう!そう言うこと!」


 ナイスプロト!

 ……もしかして、私が質問されたときに詰まることを想定して持たされた?


「よーし!じゃあ!観察を続けましょう!」


 これ以上質問されたらボロッボロにボロが出る!!

 ポンコツだってバレる前にもう少しだけ先輩風を吹かせたい!!


 ……そもそもそんな風吹かせられてたっけ?


「い、い、イツキさん!!」

「はいはい、何かあった?おっと、ありましたか?」

「フライングヒューマノイド!」


 UMA?

 確か人型の飛行物体の事だっけ?

 学生の一人が指差す方向を双眼鏡で覗くと確かに人型の物体が宙を飛び回ってる。


「何かを探してるみたいですね。教材を持ってるのでしーくいんさんの知り合いではありませんか?」


 鳥類で最も視力が良いと言われているダチョウが双眼鏡無しでフライングヒューマノイド(仮)が何をしているのかを確認する。


 私には双眼鏡使ってもそこまで見えない。


 だけど、あちらは私達を見付けたみたいでこちらの方へ飛んでくる。


「やっと見付けたのですよ」


 ダチョウの言うとおりどうやら私が担当している子の一人だった。

 名前はアフリカオオコノハズク。

 長いから私はコノハちゃんって呼んでる。


「これ、全部解き終わったのです」


 そう言ってコノハちゃんから手渡されたテキストにはびっしりと答えが書き込まれている。

 ざっと目を通した感じ全部正解っぽい。


「もう全部解き終わっちゃったんだ……かしこいねぇ」

「とーぜんなのです。何せ、わたしはかしこいので」


 確かにコノハちゃんは担当したアニマルガールの中ではずば抜けて頭が良い。

 そろそろ私が教えられなくなりそう……


「だからさっさと花丸と次のテキスト寄越すのですよ」


 だが、言動は幼い。


「そうしてあげたいのは山々なんだけど、今は忙しいから後でね」

「しーくいんが忙しいとは珍しいのです。明日は雪でも降るのですか?」


 毒を吐きやがった!

 よりにもよって学生達の前で!

 やめて!

 これ以上私の威厳を奪わないで!


「べ、別に普段も忙しいからね?」

「……?暇だからわたしのところへ遊びに来ているのではないのですか?」


 小首を傾げながらコノハちゃんはそう言う。


 ああ……そう言う認識なのね……


 私、アニマルガール達の健康管理とか勉強を教えたりとかしてる筈なんだけど、アニマルガールから見たら遊びに来てるように見えるわけね。

 今度、みんなに聞いてみよ。


「とりあえず、良い子だから帰って、ね?」「忙しいのなら手伝うのですよ。良い子なので!」

「大丈夫大丈夫!手は足りてるから!」


 そこでコノハちゃんも自分以外のアニマルガールが居ることに気が付いたようで、私の後ろにいるピューマとダチョウの方へ視線を向けた。


「うっ……ね、ネコ……し、しょうがないのです。今日は大人しく帰ることにするのです。良い子なので」


 ピューマと目があったコノハちゃんまるで逃げるようにぴゅーっと空へ飛んでいってしまった。

 ……もしかして、ネコが苦手?

 カワラバトがネコが平気だからてっきりアニマルガールになると天敵とか平気になるもんだと思ってけど違うのかな?


 さて、これでインターンシップに戻れると学生達へ振り返るとみんな口をぽかんと開けてアホみたいな顔でコノハちゃんの飛んで行った方を見てる。


「あ、あの、ここの人って飛べるんですか?」

「そりゃフクロウのアニマルガールですからね。飛べますよ」

「飛べるものなんですか?」

「飛べるものなんデス!原理は不明デス!はい、この話は終わり!」


 仮説は色々あるけど検証はまだされてないから、どうしてアニマルガール空を飛べるのかは不明のまま。


「イツキさん、アニマルガールってみんな可愛い子ばかりなんですか?」


 そんな中でただ一人そう言うものだと受け入れたのか、最初から気にしていなかったのかミライちゃんだけが少しだけズレてる質問をする。


「みんな可愛いよ」

「そうなんですか!」


 目を期待でキラキラさせるミライちゃんを見て私は思った。


 たぶん、ミライちゃんは混迷を極めてるかもしれない今のジャパリパークでも十分にやっていける。

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