第17話 未来の後輩その2

 一通り、自己紹介を済ませてピューマ達は解散。

 元々アニマルガールは5人も要らないからね。

 お手伝いとして今回はピューマとダチョウが残ることになった。


「よろしければ、おみくじ如何ですか?」

「学生相手に商売っ気出さないの。さ、みんなバスに乗って」


 銀卵を持っておみくじを進めるダチョウを制して全員をバスの中へ誘導する。


 運転手はプロト。


 一見すると運転席に誰も居ないのに動き出したバスに学生達はぎょっとする。


 良い反応頂きました!


 ここで学生達の反応に思うところがあったのか、ピューマが私の耳元で小声で質問をしてきた。


(しーくいんさん、バスって勝手に動くもんじゃないの?)


 すまねぇ。

 そこんところ教えるの忘れてたわ。

 後で教えるから待っててね。



 さて、移動中に日程の確認と……


 初日は研究所の隣にある資料館でさらに詳しい説明と見学ね。

 普段は用事がないから、中がどうなってるかは詳しく知らない。

 説明は私じゃなくて研究所の人がしてくれる。


 このインターンシップじゃ私達の役割は案内人兼お手伝いってところかな。



 資料館と言うだけあって中にはたくさんの物が展示されている。

 研究成果とかも混じってそう。

 今度、暇な日があれば見学するのも良いかもね。


 学生達が通されたのは資料館にある第二会議室。

 たぶん、使われたのは今日が初めてだと思う。


 今日の説明する人って誰なんだろう?


 資料を配り終わったくらいに会議室の入口からカコさんが入ってきた。

 気合いが入っているのかいつものお仕事モードよりキリッとした表情になっている。


 まさしく見た目は出来るキャリアウーマン!


 モニターに映した図等を駆使してインターンシップの学生に分かりやすく説明している。

 私でも分かるくらい上手い。

 カコさんってずっと研究室に引きこもっているイメージがあるんだけど、何処で練習しているんだろう?



 カコさんの話も終わって外の景色も段々とオレンジ色に染まってくる。


 今日のインターンシップはここまで!


 休憩した後は学生達を宿泊施設へ案内して、私達の今日の仕事は終わりになる。


 と、そんな休憩中の事だった。


 何やら委員長ちゃんとカコさんが親しげに話している。

 気になる!


「もしや二人はお知り合いかね?」


 と言う訳で私もお話に参加しまーす!


「あ、イツキさん。ほ、本日はお疲れ様です」

「大したことはやってないですけどね。明日からが本番ですよ。ところで、カコさんと委員長ちゃんは知り合いなんですか?」

「だ、大学時代にアメリカの動物園で知り合いになりました。偶然」

「初めまして、ミライです。ちなみに委員長じゃありませんよ」


 委員長ちゃんの名前はミライちゃんか。

 良く見ると名札にしっかりとミライって書かれてる。


「み、ミライさんはとても語学が堪能です。五ヵ国語以上の言語をマスターしてます」


 五ヵ国ぅ!?!?

 さ、最近の高校生ってハイスペックなのね。


「す、すごいね」

「いえ、カコさんやイツキさんに比べたらまだまだですよ」

「……?カコさんがすごいのは分かるけど、どうして私も?」

「イツキさんはその年でジャパリパークの職員として働いていると言うことはそれだけの苦労があったと思います。それでも健気に頑張ってるイツキさんの姿に心を打たれたんです!」


 確かに若いけどさ。

 ここに入る時だって面接官が“ま、いいか”って言いながら採用決めたくらいにはイージーだったよ?


 ミライちゃんと私の間に何やら深い認識の溝が横たわってるような気がする。


 ハッ!


 ミライちゃんの私を見る目は憧れの先輩を見るような尊敬でキラキラしてる目じゃない!

 小動物を愛でる時のような慈愛に満ちた優しい目をしてる!


「ミライちゃん、誤解してるようだからはっきり言うね。私、カコさんと同い年だから」

「え?」


 ミライちゃんの声に合わせるようにピューマ達と喋っていた他の学生の視線もこちらの方へ向く。


 その全員の視線がはっきりと物語っている。

 嘘だろ……と。


 そっか、チミ達は私が相当年下に見えてたんだね。

 是非とも何歳に見えてたか聞きたいけど、なんか嫌な予感がするから聞かないで置こうっと。


「や、やっぱり私はふ、ふけ、ふ老けて見えるんですかね……」

「いえ!そ、そうじゃなくてイツキさんの見た目が幼くて」

「ほう?」

「わ、若々しくて」

「私は老けて……」

「老けてないです!あわわわわわ」


 私とカコさんの間であわあわしているミライちゃんを見て私はほっこりする。


 私もちょっとしたことで慌てふためくこんな時代があったっけなぁ。

 今じゃ大抵の事があっても慌てふためく事はないと思う。


 追いかけ回されたり、背後から飛び付かれたり、空中から音もなく強襲されたり、音波攻撃を受けたり、目からビームを受けたり……


 アニマルガールと出会ってから人生経験がファンタジーに片寄ってきたわ。


「ミライちゃん、そんなに慌てなくても大丈夫だって。冗談だよ。冗談。ね?カコさん」

「……ハイ」


 返事が固かったような……

 も、もしかして、初対面の時に言っちゃったあの発言をまだ引き摺ってるのかな?


 そんなこんなで時間が来たからインターンシップの学生達を連れて宿泊施設へ。

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