第14話 捜索隊結成

 と、言い訳でぇえええ!!


「未知の生物を捕獲します!!野郎共!!付いて来い!!」

「お、おー」


 天高く拳を突き出して、若干ヤケクソ気味な私にインパラが若干引いている。


「しーくいんさん、あたしは捜索隊に参加するって聞いたんだけど……しーくいんさんとあたししか居ないのはなんで?」


 捜索隊とは名ばかりで現在この森に未知の生物を探しに来ているのはインパラと私の2名だけである。


 くそぅ、くそぅ!

 直前にドタキャンしやがって!

 突然、外からお偉いさんが来たのなんて知らないってんだよ!


「しーくいんさん、あたしは逃げるのは得意だけど探すのは苦手だよ」

「分かってるよ。本当だったらこの道のプロが来る予定だったの……で、残されたのがこのハイテク腕時計」

『ボク。道案内ナラ任セテ』


 この支給品の正式名称はジャパリ式自己学習型AI搭載ナビゲーションウォッチ。

 どっかで研究されている最新のコンピューターを積んだハイテク腕時計なのだ。

 ちなみに前にバスを運転していた奴と同じ奴みたい。


「シャ、シャベッタァアアア!!」

『ボクハ優秀ナAIダカラネ。会話モ楽々サ』

「しかも、しーくいんさんの声と似ている気がする……」

『ボクノ声ノサンプルハイツキ飼育員ノモノヲ使用シテイルンダ。ダカラ似テイルカモネ』

「え!?何時声を取られたの!?と言うかなんで私の声!?」

『冗談ダヨ』


 機械の癖にユーモアを持ってやがる!

 でも、心配だから寮の中に盗聴器が仕掛けられてないか調べてみようかな……


「おもしろーい!ねぇねぇ、名前は何て言うの?」

『プロトダヨ』


 こうして、私とインパラとプロトによる謎の未確認生物の捜索が始まった。


 今回はアニマルガールであるインパラも私とお揃いの捜索隊の服を着て参加している。

 帽子を被ると角みたいなアホ毛やケモ耳が隠れて人っぽく見える。


 この森の特徴としては日本の気候を再現したもので、日本の森林に暮らす様々な動物がいる。


 日本なのに日本の気候の再現っておかしくない?


 そう言うと、島の位置的に沖縄の気候に近くなってしまうから調整が必要になるとプロトから返答が来た。


「しーくいんさん、今更だけどみかくにんせいぶつって何?」

「んー、文字通りの意味なんだけど……まぁ、ちゃんと調べられていない生物ってことかな?昔はカモノハシだって未確認生物だったんだって」

『イツキ、ソロソロ発見場所に着クヨ』


 ついに謎のアニマルガールが発見された場所へ辿り着いた。

 周囲を見ると、ビーム痕と思わしき一直線状の抉れた地面がある。


 生物としてはちょっと過剰な戦闘力を持ってるみたい。

 確かにこんなものを撃たれたら私だって逃げ出しちゃうかも。


 まぁ、自分の身体より大きな岩でキャッチボールが出来るピューマとかグリズリーに比べたら可愛いものデス。


「脱走のプロとしてインパラは逃げるとしたら何処に行く?」

「あたしはしたくて脱走してる訳じゃないよ!ただ、気が付いたら道に迷ってるだけで!」

「一応縄張り持ちの動物でしょうが!」

「だって、サバンナはあんな見通し悪くないよ!それに縄張りなんて強く意識したことないし」


 相変わらず方向音痴が直らない。

 これはもうこの子個人の特性なのかもね……


「ともかく!逃げるとしたら……アッチかな?」


 専門家も居ない宛のない探索だけど、任されたからには最善を尽くすとしますか。


 インパラの野生の勘を信じて私達は地道に謎のアニマルガールを探索する。

 元の謎の生物については若干諦めてる。


 ふと、風の流れに乗って虹色の粒子が私達の目の前を通り過ぎる。


 そう言えばアニマルガールが現れた日って大気中に溶けてないサンドスターが良く風に流されて舞ってたっけ?


 確か、一時的に飽和状態になってたとかなんとか。


 それを目線で追っていると木の影から私達を見ている謎のアニマルガールと目があってしまった。


「……」

「……」

「……」


 私とインパラはお互いに目で合図する。


「イェアアアアアア!!捕獲ぅうううううう!!」

「ガチ狩りごっこだあああ!!」

「なんだお前らぁああああああああ!!」


 謎のアニマルガール捕捉!

 ただいまより捕獲作戦を開始致しますん!!


 私とインパラはアミを片手に謎のアニマルガールの元へ駆け寄る。

 同時に駆け出したけど人とアニマルガールでは身体能力の差は歴然。

 一足ならぬ三足くらい先に出たインパラが謎のアニマルガールに向けてアミを振り下ろした。


「おりゃー!」

「来るなぁあ!」

「ぎゃー!」


 何とも間抜けな声で目からビームを受けたインパラが私の横をすっ飛び、木に当たってずるずると地面に崩れ落ちた。


「ぐぇー……」


 流石アニマルガール。

 気絶こそしたけどほとんど無傷。


 と、本の一瞬だけ目を反らした瞬間の事だった。


「びゃあああああああ!!」

『気ヲ付ケテ。ビームガ来ルヨ』


 警告が遅すぎるわー!!


 私は謎のアニマルガールから連続発射されたビームを受けてしまいインパラと同じ様に派手にぶっ飛ばされて木にぶつかってずるずると地面に倒れる。


 その後は覚えてない。

 気が付くと私とインパラは寮のベッドの上だった。


 その後、あの日を境に謎のアニマルガールは姿を見せることはなく、未確認生物の正体も結局分からず仕舞いだった。


「しーくいんさん、これ見てよ」

「何?ってこれってUMA図鑑じゃん」


 ある日、インパラが私にUMA図鑑のとあるページを見せてきた。


「このツチノコって、あのアニマルガールに似てない?」


 確かに言われてみれば模様とかもツチノコに似ていたような気がする。


「まっさかー……まさかだよね?」


 真相は闇の中である。


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