第13話 未確認生物
始まりは一本の電話からだった。
「はーい!ピューマよ。うん……ん?出ないわよ。………分かった。しーくいんさーん!研究所の人から電話ー」
どうやら私宛の電話らしい。
「はい、ただいま代わりました」
『お世話になっております。研究所のタチバナと言うものですが……アニマルガールの専門家であるイツキさんに少々……質問があります」
何とも歯切れの悪い研究員の言葉。
それに若干……かなーりイヤな予感を感じながらも私は黙って研究員の言葉を待つ。
『アニマルガールって……目からビームを撃つんですか?』
「有給取ってリウキウエリアでリフレッシュなんて如何ですか?あと、専門家じゃないです」
完全に脊髄反射的に返答をしちまいやした。
だって、真面目なトーンで目からビームなんて言うんだよ?
どう考えても精神的に疲れ過ぎてヤバい状況じゃん!!
『……とりあえず、映像を送るのでご確認下さい』
そうして、電話が切れる。
研究員が電話を切る直前に、だから言いたくなかったんだと言う言葉が聞こえたような気がする。
後日、宅急便で届いたDVDを鑑賞する。
先日の研究員の話もあってか心無しか禍々しいオーラを放っているような気がする。
見たくなくても一応見なきゃね……
私はDVDデッキにこの届いたDVDを入れて映像を再生した。
映像は夜中に赤外線カメラで撮影したのか、全体が緑っぽい。
どうやら、場所はセントラルエリアの近くのカワラバトが落下した森の中にいるようだ。
『カメラは回ってるか?見ろ。アニマルガールだ』
『特徴からすると、爬虫類でしょうか』
『あの長い尻尾はヘビの可能性が高い』
カメラの映像にはフードを被った爬虫類のアニマルガールの姿が映し出されていた。
足元を見ると下駄を履いているのが見える。
たぶん、場所的に日本出身の子だと思うんだけど……
『……アオダイショウ?シマヘビ?』
『いや、ニホンマムシかもしれん』
『赤外線カメラでは色や模様は良くわかりませんね。近付いてライトで照らしてみます』
カメラが近付く際に枝を踏みつけた音が鳴り、ヘビのアニマルガールは撮影者の方へ振り返った。
『あの、こちらを正確に捕捉しているように見えるのですが……』
『……そうか。ピット器官だ。そうなると、彼女はニホンマムシかもしれん』
そして、映像が一瞬真っ暗に切り替わり、ライトの明かりに照らされたいつもの見慣れた色合いの映像へと切り替わる。
『ウワァアアアアアアアアアアアアア!!』
突然のライトの明かりに驚いたのかヘビのアニマルガールは絶叫を上げる。
それと同時にその子の目が光始める。
ら、ライトの反射かな?
『す、済まない。驚かせてしまったか。私はこの地方の生態維持を任さ……』
不自然に声が途切れる。
それもその筈、何故ならアニマルガールの光っている目から青緑色のビームが放たれたからデス!
でも、当てる気は無かったのか撮影者にはビームは当たっていないみたい。
驚いたから反射的にビームを出しちゃったのかな?
『ま、まさか、び、ビームだと!ヒィ!退却だ!』
『ま、待ってください!』
そして、映像は終わった……
「……私、疲れてるのかな?今度、リウキウエリアでリフレッシュしてこよう」
アニマルガールはどうにも人間の常識を軽々と無視した現象を引き起こすのが得意みたい。
ああああああああ!!
どうなってるの!!
目からビームってどうなってるのぉ!!
わーい!!
すっごーい!!
ハッ!
い、いかん、もう聞いてるかもしれないけど、本当のアニマルガールの専門家に相談だ!
私はスマホを手に取ってある人に連絡をした。
「カコさん!!アニマルガールの目からビーム出ました!!何故ですか!?」
『…………へ?え、えーと、リウキウエリアでり、リフレッシュ休暇を過ごした方が良いと思います。絶対』
その後、私がストレスやら疲労やらで幻覚を見ているのではないかと勘違いしているカコさんを何とか説得して、例の映像を見るように勧める。
どうやら、カコさんの手元にも届いたみたいだけど、仕事の都合でまだ見ていなかったみたい。
映像を見たカコさんの見解としては、活性化したケモプラズムを打ち出しているのでは無いかとのこと。
爬虫類の中にはサバクツノトカゲと言う目から血を発射して身を守るユニークな奴もいるらしいので、そうした生態が反映された結果である可能性が高いらしい。
世界には本当に色んな動物がいるのね……
スカンクだとケツからビームを撃てるようになりそう。
ただ、そんな目からビームを打つような特徴のある動物はサバクツノトカゲだけなので、もしかしたらこのジャパリパークに生息する固有種である可能性もあるとのこと。
そして、今回は相手がアニマルガールであると言うこともあり、上の方から私に対して緊急指令が下った。
謎の爬虫類アニマルガール緊急接触及び、元動物捕獲作戦。
え?
私がやるんですかぃ!?
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