Outside the diary Part 3

 そして、みんなの笑顔と引き換えに私の財布は福沢諭吉一枚分のダイエットに成功した。

 そうだよね。

 観覧車以外も乗りたいよね。


「楽しかったね!」

「ああ」

「わたしも何だかんだ初めて乗ったわ。楽しかったー。今度はグリズリー達も連れて来ようかしら」

「つ、次はみんなのお小遣いで乗って!もう奢らないからぁ!!」


 でも、まぁ……みんな楽しんでくれたイイノカナー?

 あ、そう言えば!


「なんでパークセントラルに来たがってたの?遊びに来たって訳じゃないよね?」

「……そうだった」


 そうだった!?

 忘れてたの?

 マジで忘れてたの!?


「私はここにオイナリサマと呼ばれるフレンズを探しに来た」

「ギンギツネのこと?そう呼ばれてるのは聞いたことないんだけど……」

「……その子とは違う。見た目は白いキツネのフレンズだ。守護獣の一人。いや、一柱と呼ぶべきか?」


 ま、また私の知らないアニマルガールが……

 アニマルガール達の中では結構顔が広いと思ってたんだけど……


 その時だった。

 私達の周りに変な物が現れた。


「黒い……サンドスター?うわっ!?」


 大量の黒いサンドスターがまるで私達を取り囲むみたいに集まってきて、あっという間に私達を外と切り離した。


「……」


 謎の少女Sが懐から虫眼鏡のレンズを取り出して天に掲げると、レンズの中に鳥居を逆さにした緑色のマークが現れて周りの黒いサンドスターを弾き飛ばした。


「お、おう。ファンタジー……へ?」


 そして、私は全く知らない場所に居た。


「え?どこここここコケ!?」

「し、しーくいんさんがニワトリみたいになってる。でも、これは……わ、笑えないわね」


 目の前にあるのは確かにパークセントラルなんだけど……

 同じ建物、同じ構造、同じ景色。

 なのに、パークとして大切な何かが欠けてしまっている。


「……イツキさん、私達の側から離れないで欲しい」

「ちょっと冷静過ぎるでしょ!!何か訳の分からない超常現象的なものが起きてるんだよ!?」

「……私もここまで露骨な超常現象は初めてだ。私も十分に焦っている」

「嘘吐けぃ!!」


 驚いてるのは私とピューマだけで、謎の少女Sとオオウミガラスは至って何とも無いような感じ。


「……」


 謎の少女Sは虫眼鏡のレンズを手にしたまま、周囲を警戒するように視線を向ける。


「……出たか」

「何が!?」


 謎の少女Sの視線の先には見たこともない生物の大群が蠢いている。

 ん?

 でも、見たことあるような……


「プランクトン?て言うかデカッ!!」

「んー、少し可愛いわね」

「セルリアンだよ!!ピューマちゃんもイツキさんもぼーっとしてないで逃げないと!!」

「セルリアン?それに逃げないとって?」


 まるで私の疑問に答えるようにピューマの側に近付いてきたセルリアンと呼ばれる巨大プランクトンがピューマに向かって触手を振り下ろしてきた。


「ピューマ!」

「させないよ!」


 オオウミガラスが間一髪のところで手刀でセルリアンの触手を切り飛ばした。


「あ、ありがとう」

「……活路を切り開く!あの城まで走るぞ!」


 謎の少女Sの虫眼鏡のレンズが光り輝く。

 その光を受けてピューマとオオウミガラスの身体が僅かにサンドスターに似た輝きを帯び始めた。


「何……これ?力が湧いてくるわ」

「これは御守りのレプリカだ。日に何度も使えない!行くぞ!」


 オオウミガラスと謎の少女Sが走り出す。

 私とピューマも少し遅れて二人の後を追う。


「たぁ!」


 オオウミガラスは先頭を行き、セルリアン達に攻撃を繰り出しながら道を切り開いていく。


「わたしも負けてられないわね!」


 ピューマもオオウミガラスの横に並んで一緒にセルリアン達と戦いながら進んで行ってる。

 城の中までもう少し……!


「アイタっ!」


 その時、私は段差に躓いて転んでしまった。

 振り返ると私の直ぐ後ろにはセルリアン。


「あ……」

「しーくいんさん!!」


 先を進んでいたピューマの助けは間に合わない。

 セルリアンの何の感情も感じられない無機質な瞳が私を捕らえて攻撃体制入る。

 私は次に来るであろう攻撃にぎゅっと目を瞑る。


 ドン!!


「イツキさん!早く立って!」


 セルリアンは謎の少女Sの渾身の体当たりで突き飛ばされて、ゴム毬みたいにポンポン地面を跳ねる。


「ありが」

「お礼は良い!早く!」


 私達は城の中に入り、扉を閉める。


「……はぁぁぁぁ。疲れたー」


 気が抜けて私は床にへたり込む。

 平和なジャパリパークにあんな生物がいるなんて……

 でも、どうして今まで見付からなかったんだろう?


「イツキ……さん?どうしてここに?」


 知らない声が私を呼ぶ。


 声のする方を向くと白いキツネのアニマルガールが驚いたように目を丸くしてこちらを見ていた。


「えーとぉ……どちら様?」

「なっ!私を忘れたんですか?あれから一週間も経っていませんよ!」


 ヤバい。

 こんな特徴的なアニマルガールなのに記憶に欠片もない。

 いつの間にか私は健忘症に掛かっていたの!?


「ん?もしかして……あなたは過去のイツキさん」


 どゆこと?

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