第11話 カワラバトの冒険その1
清々しいBGMが掛かりそうな朝の事だった。
いつも早起きなカワラバトは何を思ったのか開け放たれていた窓から私の部屋へと侵入する。
比較的羽音の大きいカワラバトの羽ばたく音が聞こえないくらい私は深い眠りに着いていた。
そんな私の近くに立ってカワラバトは大きく息を吸い込んで……
「コーケコッコー!!」
「己の名前を言ってみろぉおお!!」
何故かニワトリの鳴き真似で叩き起こされた私は瞬時にカワラバトへツッコミを入れる。
「……カワラバト」
「どうしてそんなに渋い顔して言うの……」
まるで甘柿と思って渋柿を丸かじりをしたような渋い顔で答えるカワラバト。
「ウチ、ニワトリに転職したい」
朝っぱらからいきなりこの子は何を言ってるのかしら?
「気付いたの。ウチは対して役に立っていない」
カワラバトは現状の食っちゃ寝している状況に何か思うところがあったらしい。
で、その答えがニワトリに転職したいと言う謎の発想。
どうしてそうなったし……
ぶっちゃけ今は教育期間だし、カワラバト風に言うなら親鳥からエサを貰う雛の時期なんだけど……
「ウチは雛じゃない!」
「分かった分かった。とりあえず何かしたいのね。ちょいと相談するから待ってて」
役に立ちたいねぇ……
役に立ちたいと言うけど、本人は何をすれば良いのか分かってないみたいだから、こっちで何か考えてあげないと……
まぁ、家事の手伝いでもさせて……
これだと今まで通りじゃん。
くぇええ!
眠くて頭が回らんぞぃ!
「お、そうだ」
珍しく妙案を閃いた私は早速それを実現すべく、スマホで連絡を取る。
三日後!!
「ほぇ?」
そこには背中に大きめのリュックを装備した元気なカワラバトの姿があった!
「これからカワラバトにはバイトをやってもらいます!」
「ばいと?」
「イエス!バイト!」
カワラバトにはこれからジャパリパークで宅急便のアルバイトをしてもらう。
「ジャパリパークってさ。この島だけじゃなくて、海を隔てていくつかの島に別れてるんだよね。定期船で移動するんだけど、急いでる時だと間に合わなかったりする。そこでカワラバトの出番!空を飛んで荷物をジャパリパーク中に届けちゃおう!」
「おー!」
と、言ってもカワラバトが空を飛んで無理せず運べるのは20kgくらい。
メールで送れない書類とかサンプルが主な物になるかな。
「地図は読めるよね?」
「読める!方向感覚もバッチリ!」
「よし!じゃあ、最初のお仕事はコレ!ホートクエリアの管理センターにこの荷物を届けてね」
「らじゃー」
「それじゃ行ってらっしゃい!」
リュックの中に荷物を入れたカワラバトは大空へと飛び立った。
何だかんだ空を飛べるカワラバトでも、寮から遠くへ行くのは初めてのことで、空からジャパリパークを見下ろしながら目的の場所へ向かう。
人工物が集中するセントラルエリアから飛び出して、一面に大自然が広がる。
「?」
しばらくカワラバトが景気良く飛ばしていると前方から何やら人影が近付いてくる。
進路上ぶつかりそうなので、少しだけ角度を変えたけど、その人影はカワラバトに合わせて進路を変えてきた。
そして遂にカワラバトに人影が接触してきた。
「はじめましてワタシはトキ」
その子はとても綺麗で儚げな印象を抱かせる鳥のアニマルガールだった。
トキって言うと新潟からやって来た子かな?
カワラバトと同じ日本出身のアニマルガールだね。
「ウチはカワラバト」
初めて見る自分以外の空を飛べるアニマルガールを見てカワラバトとトキはお互い興味津々でお互いの姿を見る。
「気が付いたらこんな身体になっていたのだけど、アナタは何か知ってるかしら?」
どうやらカワラバトが出会ったアニマルガールは自分の身に何が起きているのかイマイチ把握してなかったみたい。
もちろん、カワラバトも良くわかっていないし、私も全然分かってない。
「こういう身体になることをアニマルガール化って言うんだって。しーくいんさんが言ってた」
「そうなの。そのしーくいんさんは何処に行けば会えるのかしら?」
「あっち。あの大きな建物の中にいるカコさんって人に聞けば教えてくれるよ」
「ありがとう。アナタとっても親切なのね。お礼に一曲歌うわ」
「おお!」
カワラバトはトキがお礼に歌ってくれると聞いてその場でトキが歌うのを待つ。
数秒後……
ゴゥッ!!!
「ほえええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ………」
カワラバトは気を失って近くの森へ落下した。
ちなみにカワラバトは何が原因で森へ落下したのか記憶に無いらしい。
とにかく物凄いインパクトを感じたような気がするとのこと。
何があったんだろう……
「……ほぇ?」
気が付くとカワラバトは森の木の枝に引っ掛かった状態になっていた。
何とか木の枝から抜け出したカワラバトは地面に降り立つ。
何故か全身に物凄い疲労感を感じていたカワラバトはとりあえず一度休むことにしたみたい。
身体に付いた木の枝や葉っぱを払って荷物が無事かどうか確認する。
「ほっ……」
無事だったみたい。
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