祝祭



 あなたの記憶から彼方に燃える旅人。あなたは光を見る。あなたは目を閉じて、あなたは光を浴びて。あなたはユーカリの木の下で、道玄坂のとある梢のそばでゆったりと休む。あなたは鳥になり空を見上げ、翼で空気を覆うようにして飛び立つ、まるで鳥であることが死であるかのように不吉な占いを感じる。あなたは目を開ける。


 私は囁く。私私私私私。手渡しで雲をつかみひっぺ返す。いわし雲、うろこ雲、絹層雲、積層雲。片っ端から裏返していくと、その裏地は青く光って見える。それは夜空の侘び寂びの薫りがする。ゲオルグ・トラークルの死の孤独のことを思いやるのには十分、満たされた光だ。そして囁く。再び囁く。ささやかな幸せを感じて、と。私は目を閉じる。


 あなたは目を閉じる。起訴猶予処分、そのことがあなたを冷たくする。あなたはユーカリをユーカラと間違えて書く。ユーカラの木とはなんぞや。アイヌ語を、喋る木? あなたは恐山のイタコにもなったような気分でものを言う。その音がどこまで聞こえるか。その声の根がどこまで響くか。あなたにはわかるまい、あなたにしかわかるまい。


 私は、目を、中に引用された言葉の包み紙が開けられ、要するにオブラートというやつ、その中に、発見する、育て方を間違えたのか私は、目を種と思って育ててきたが、これだけの涙液に塗られても芽を出さない、そんな不愉快な感情が涙腺の淵いっぱいに広がって、溢れそうになる。私はそこで、泣くことをやめよう、と思う、とすると今までは嘘泣きだったのか、意志によって泣いていたのか、と疑わしくなったところで、語るのをやめる。


 あなたは審判を受ける、あなたがひどく窶れているせいで、誰かに中傷されたのだ、不合理をやめさせるには、多分多分多分合理でもって接するしかない、という気がする、あなたは言葉遣いもたどたどしく、入国審査のときに間違えて空気の階段を登ろうとしてしまう、それが不可解なダンスステップに見える、そこで夢が終わる。


 私は死を書いた。

 あとはあなたがなんとかしろ。

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