透明な小説 b

 ピーっとやかんの音が鳴る。その間にもイマニュエルは性行を始めているのだ。相手は神楽弓月という女学生で、プロットによれば哲学科の大学院生ということだが、彼女が姦通されているときに彼女が感じているのは、彼女が夢の中で犯されているということ、また彼女の10歳になる娘が自分が今まさに置かれている状況を夢見ているということ、これである。イマニュエルは一通りのことが終わるとお茶を淹れ、茶葉はルイボス、風味はオレンジの香りのするものを用いて、神楽弓月を労うのだった。神楽弓月の方はというと、まだ夢の中にいたので、夢の中に射精されたという感覚が強く残っていて、そこからとても逃れられなかった。

 「しかし、それにしても私たちの交流は、本当に現実のものなのかしら」神楽は考えた。神楽弓月は夢の中の娘に、イマニュエルが幻想のスマートフォンを渡すのを夢見たので、その番号にかけてみることにした。それが夢の中では一番確実な確認方法に思えたからだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る