お前がブラコンだという事を俺は知っている

アキノリ@pokkey11.1

第1話 お前がブラコンだという事を俺は知っている

ブラコンとはブラザーコンプレックスの略称だ。

高校二年生、16歳、成績は下から中の辺り、目鼻立ちはEライン的には微妙、身長も170センチと低いのか高いのか全く分からない様な凡人男、俺、飯島カイ。

そんな俺には正反対の全てにおいてトップクラスの義妹が居る。

俺の通っている学校中で成績オール1位の少女で、学校一容姿端麗だ。

あまりにも恨めしい飯島桜という俺の義妹。

高校一年生、15歳で、黒髪のポニテの身長163センチと小柄なのだが、そんな義妹は顔を活かしてスゲーモテている(自称)と言っている。

彼氏が居る(自称)と偉そうに言うのだ。

だが、俺は知っている。

彼氏など居ないという事を。

アホ桜には、俺をとにかく愛して止まないという事実が有るという事を。

そんな事はまぁどうでも良いのだが、その隠れ愛が結構ウザい。

極秘裏にアプローチしてくる。

我が義妹よ。

それって彼氏もクソも無いだろ。



一階が菓子屋、名前は餡。

二階が住居スペースという様な感じの俺の家。

近所の奥様方の間ではそこそこ有名な菓子屋だ。

親父が全てにおいての菓子職人。

そして桜のお母さんの由紀子さんは菓子を販売する接客業。

俺達はそれらのお手伝い。

そんな感じで家族全員で生計を成り立てている。


「兄貴!餡子が少なくなった!持って来て!」


「了解!」


基本的に俺達が手伝うのは土曜日限定だが。

日曜日や平日は忙しいだろうからせめてもの休め、という感じで親父からは言われ、一応、俺達は休んでいる。

有難いが、影響は無いのだろうか?と、気になってしまう。

だがそれでも親父は絶対に俺達の手は借りないと、言っていた。

俺はその言葉を放ち、1人で黙々と頑張る様な、そんな親父の事を尊敬していた。

親父を支えてくれる義母の由紀子さんの事も、だ。

しかしそんな中で、桜とは。

手伝い中以外は俺と桜は水と油(義妹によれば)らしい。

別に関わろうと思わないが何というか。

あれだな、結構ウザい。



そして何時もの閉店時間、17時。

俺達は菓子屋の制服を脱ぎ、更衣室で俺は項垂れる。

今日は客が多かった為にちょっと疲れた。

しかし何だかこれではあれだな。

まるで明日の○ョー的な感じである。


「.....ハァ.....」


とにかくは。

何か口に含まないといけない気がする。

体がぎこちないしな。

そう、思って、動こうとした時、更衣室の扉がノックされた。


コンコン


「.....はいよ」


項垂れていた顔を上げて、そのノックに答える。

そして、桜が入って来た。

エプロンに、制服、そして白帽子という、スタイル抜群の桜。

しかしその顔は相変わらずの眉根を寄せた、俺を嫌っている様な感じだ。

何ですか?ツンデレですか?

ご注文はツンデレですか?ってか?


「.....兄貴。はいこれ」


「.....和菓子か」


妹が持っていたモノは、おぼん、に乗った和菓子とお茶だ。

甘い物を口に含むのは良い事だな、確かに。

俺は桜の持っている、おぼん、に乗った俺達用の模様無しの和菓子と。

お茶を受け取るなり、飲んで食べた。

美味いねぇ。

流石は俺の親父特製のお菓子だと俺は納得する。

ここまでくるのに相当苦労したけど。


「えっと、食べた?じゃあ、早く、さっさと、とっとと出て行って。私が着替えれない」


「.....うん。まぁ、分かったよ。早めに出る」


俺の和みをかき消す様に、桜は話す。

因みにこの更衣室は男女共用だ。

何故なら金が無いし、場所も無いし。

俺はさっさと制服をロッカーに仕舞いそしてとっとと出て行く.....と見せかけて。

そっと、更衣室の扉を開けた。

そこには。


「.....」


俺はその様子に自らの額に手を添える。

その場所に居たのは変態だった。

俺の制服で顔を紅潮させている、桜。


「.....お兄ちゃんの匂い好き.....良い匂い.....」


まさに幸せそうな感じだ。

しかも俺の着た服を好きとか言ってんぞ?

あれで俺に対して何も無いってそらかなり無理がある。

俺はため息交じりに、ドアをゆっくりと閉めた。



リビングに近い部屋。

その部屋で俺はソファに寝っ転がってテレビを観て風呂が沸くのを待っていた。

今日の風呂沸かし当番は桜である。

その為、何もせずにゆっくり出来る。

親父と、母さんは一階で最後の仕込みなどをやっている。

一応、俺達がする事は何も無い。


『金メダルを取れた須藤選手は.....』


「またこれかぁ。でも凄いよなぁ.....本当に」


俺はリモコンを操作しながら、 TVを観る。

今の時期のニュースは冬季オリンピックが話題な感じであった。

俺は苦笑いを浮かべる。


「そしてオリンピックの話ばかりだな」


2018年の2月20日である、今。

見事に冬季オリンピックの時期である。

だが、全く嫌では無い。

何故なら、オリンピックは盛り上がって面白いし。

と、思って居ると。


「何してんの?あんた」


「見りゃ分かるだろ。俺はオリンピックを嗜んでいる」


風呂を入れたのか、戻って来た様だ。

その様な事を言う桜に俺は答える。

目の前の須藤選手の金メダルを獲得した様子を観続けながら。

まぁ、それなりに大きな欠伸をしてから手で抑えてむにゃむにゃ言う。


「.....あっそ.....」


そんな、あっそ、という声に。

どっかに行っただろうと思っていた俺だったが。

背後に違和感を感じて、振り返った。

そこに、寂しそうな感じで桜が突っ立っている。

テレビを見ている訳でも無い。

私を見て、という感じだ。

何だコイツは、何やってんだ。


「.....?」


俺はクエスチョンマークを浮かべつつ。

桜を見続けた。

すると。


「.....こっち見るな!」


何でかキレられました。

いや、ちょ、何でやねん。

桜は台所に歩いて行く。

立っているから気になって見たってのにそれは無いだろ。

意味分からん。


「.....まぁ、良いか.....」


お怒りの人間は取り敢えず、置いておくべきだな。

そして俺はまた欠伸をして、テレビの方を見つめる。

リモコンを持ちながら、ピコピコピコピコと操作する。

すると、台所の方から声がした。

今度は複雑な声の様な。


「私、男の人と付き合ってる」


「.....」


「私ね!同級生と付き合ってるの!!!!!」


面倒臭いな。

それがどうしたのだ。

俺はリモコンをソファに置いて眉根を寄せてから。

盛大にため息を吐いて、桜の方を見る。


「.....桜。一体どうしたんだ」


「私が男の子と付き合ってるのに何も言わないの!?」


「いやいや.....理不尽じゃね?それで何を言えと?」


お前が俺をとにかく大好きなブラコンだという事でも言えと?

そんな事言うたら恥ずかしくなってお前が死ぬだろうから敢えて言ってないのに。

思っていると、プクッと桜は可愛らしく頬を膨らませた。

それから台所から去って行く。


「馬鹿!!!!!」


涙目で叫ぶ、桜。

台所から離れて自室に篭った様だ。

俺はその様子に、盛大にため息を吐いた。

もうどうしろって言うのだ。

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