第47話 3節 重力波の衝撃(8)

砲弾が当たったケンの体は「く」の字型に曲がり、宇宙空間を戦艦と反対方向に移動して行く。

「タリュウ、急いでケンを助けてくれ」

ヒロが言うと同時に、タリュウが影宇宙から顔を出した。


まさにその時、チイ星の戦艦の数十倍大きなピラミッド型の宇宙船が目の前に現れた。

その宇宙船はすぐに強力な引力を使って、ケンの体を回収してしまった。

ヒロたちが驚く間も無く、ピラミッド型宇宙船の扉が開いた。


中から出てきたのは、チイ星のホルス、アモン、そしてトイ星のヌト、アテンだ。

「これは、いったいどういうことなんだ?」

ヒロは混乱しているが、サーヤは冷静に問いかける。

「ケンは生きていますか?」


「皆さん、その少年は生きています。それどころか、全く無傷です」

ヌトの口が動き、その声がヒロたちの耳元で聞こえる。

「でも、あなた達はケンを攻撃した上に、宇宙船の中に隠しているじゃないですか」

ミウがジリュウの口から顔を出して、ヌト達を非難する。


「これは失礼した。事情を説明しましょう」

今度はアモンが前に出て来た。

「科学者達は、我々と違う星から宇宙人がやって来る確率はゼロに近いと言っているが、防衛省としては万一の事態に備えて準備をしている」


アモンは説明を続ける。

「防衛省の中には、我々の星の周囲を常時監視している装置がある。その装置が数日前に侵入者を感知したが、どこにいるのか突き止められなかった」


「僕たちが影宇宙の中にいたから、わからなかったんだな」

ロンがつぶやくと、その声が聞こえたようにホルスが話を引き継ぐ。

「侵入者の所在を探すと同時に、我々の防衛力を見せつける目的で戦艦部隊を出動させたが、侵入者の姿は見えなかった」


「あー、その戦艦部隊をマリが見つけて、僕たちが動き出したから察知されたんだ」

ヒロはヌト達の探査能力の高さに感心している。

「侵入者が姿を表さないので、宇宙空間に大掛かりな幻影を作り出して、侵入者をおびき出そうとした」


そう言ってホルスが下がると、アテンが説明を続ける。

「チイ星の戦艦部隊がトイ星を攻撃するという状況で、あの少年が飛び出して来たので、侵入者の姿を確認できた。同時に、侵入者達の行動を分析した結果、我々の敵ではないと判断した」


「僕たちが好奇心で近づいたために、あなた方は強く警戒したんですね。今後は気をつけて行動します」

ヒロが反省の言葉を伝えると、マリが不安な気持ちを声にする。

「ケンはホントに無事なの?早くケンを返してください」

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