第28話 2節 オリンポス惑星の住人(9)

「オリンポス惑星に到着する前に、大事なことを説明しておこう」

みんなの耳に、父親シュウジの声が聞こえる。


「この惑星は地球の約二倍の大きさで、北極と南極の周辺以外は気温がかなり高い。この惑星は一つの巨大な恒星こうせい、オリンポスの太陽の周りを回っている。オリンポス惑星の自転速度は地球の二倍なので、この惑星の一日は地球の一日より時間が短い」


「じゃあ、オリンポス惑星の住人の寿命は、地球人より短いの?」

ヒロが素朴な疑問を口にすると、シュウジの声が答える。


「そうとは言えない。我々の宇宙の中の光の速さは一定だから、どの惑星でも時間の進み方は同じだ。つまり、この惑星の一日が地球の一日より短くても、住人の寿命は同じくらいかもしれない。」


「うーん、そのことはよく分からないけど、オリンポス惑星の住人は、地球人に似ていますか?」

マリがギリシャ神話の絵を思い浮かべて質問すると、シュウジが答える。


「オリンポス惑星の住人の外見は地球人に似ているが、四本の腕を持つ人種が多い。身長は人によって二メートルから三メートルで、人種による違いが大きい。男女による身長差はないようだ。頭が大きく、長い胴から四本の腕が出ている。二本の足は太くて短い。」


四本の腕にはみんな驚いたが、ケンの反応は違った。

「荷物が多い時に手が足りないって思うから、四本あれば便利だなあ」


「少数派だが、腕が二本で足が四本という人種もいる。それは、胴体と足が馬のようで、胸から頭が人間のように見える。また、腕が二本、足も二本という人種は、奴隷どれいとして支配されていた時代があった。地球の古代ギリシャのようだ。しかし、奴隷時代が過ぎると、美しい人種として人気が出たんだ」


シュウジが話しているうちに、オリンポス惑星が目の前に近づいた。


「この惑星のどこに行けば、デウスに会えるの?」

ヒロが問いかけると、シュウジが答えた。


「過去のオリンポス惑星には多くの国があって、相互に争ったり協力したりしていたが、長年かけて一つの国になった。デウスとは一人の人物ではなく、オリンポス国の代表者(大統領のような指導者)の呼称こしょうだ。人望・人格・心身の能力に優れた複数の候補者が10年に1度の選挙によって選出されるんだ。ヒロたちがオリンポス惑星を訪問するということを、デウスだけに伝えてあるから、直接デウスの家に行きなさい」

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