第22話 2節 オリンポス惑星の住人(3)

「じゃあ、オリンポス惑星に向かって出発しようか」

ケンが、ヒロやミウの反応を見るように、ひかえめな口調で言った。


「おっ、すごいな。オリンポス惑星って、高度な文明が発達していた惑星だよね」

ロンが目を輝かせる。


*** ヒロ、サーヤ、サスケ、おいらの中に入れよ・・・

最初にタリュウが口を大きく開けた。


*** ミウ、マリ、ヒショウ、オリンポス惑星は遠いよ・・・

ジリュウが口を開けると、サブリュウ、シリュウも続いて口を開けた。


*** ケン、コタロウ、ハンゾウ、数億年も過去にさかのぼる旅だぞ・・・

*** ロン、カゲマル、数万光年も離れたところに行くんだよ・・・


オリンポス惑星に高度な文明が栄えていたのは、ほぼ六億年も昔のことだ。

この宇宙の時間を六億年もさかのぼるには、影宇宙かげうちゅうの中をどれだけ上昇し続ければいいのだろう。


「デウスに会うためには、影宇宙の中で何ヶ月上昇しなければならないのかな?」

ケンが不安な声を出すと、サブリュウが答える。


*** そんなに長い時間は必要ないよ。おいらたちは改造されて、超高速で上昇できるようになったんだ・・・


「オリンポス惑星までの距離は数万光年もあるんでしょう?」

サーヤが父親に問いかけると、サスケの口からシュウジの声が聞こえる。


「太陽は、銀河系の中心から約三万光年離れた位置にあって、約二億年かけて銀河の中を一周している。影宇宙の中で数億年さかのぼっている間に、オリンポス惑星が近づいてくるから、自分で遠くまで移動する必要はないよ」


四匹の竜たちが、影宇宙の中を超高速で上昇している。

出発した時に数万光年離れていたオリンポス惑星の六億年前の位置に向かって、水平方向にも移動している。


四匹の竜たちは、シュウジによって遠隔操縦えんかくそうじゅうされている。


「影宇宙の中って、遠くに星が見えるだけで、まわりは真っ暗だね」

ジリュウの中にいるマリが、退屈たいくつな気持ちをミウに伝えた。


「そうだけど、出発してからまだ五時間だよ。もう少し我慢がまんしようよ」

ミウが語りかけると、後ろを向いていたマリが振り返って声をあげた。


「あっ、地球みたいな星が見える。ほら、見えるでしょ、ミウ」

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