第19話 1節 アトランティスの最期(18)

ほとんどの人たちが不安な表情をしているので、ディプレ王は話を続ける。


「そこで、みんなでこれから準備を始めよう。南の大陸に移住する準備だ。南の大陸の山脈は、ここから見えている。その山脈の南側には広大な砂漠があるから、山脈の北側には危険なけものたちが近づけない」


「北の大陸には、千年以上前に移住したガディル王の一族が住んでいます。我々も北の大陸に移住してはいけませんか?」

王のお供の一人が、みんなの疑問を代表して口にした。


「なるほど、それもよいだろう。しかし、北の大陸では、氷河が溶けて大洪水が起きたり、おおかみなどの危険な獣たちがおそってきたりして、豊かな街造りができていないようだ。一方、南の大陸なら、洪水や獣たちの危険が小さいから、安全な街を造れるはずだ」


みんなはディプレ王の言葉に納得したようだ。


「やっぱり、アトランティスからアフリカ大陸に移住したんだ。そうだよな、ヒロ」

ケンがヒロに同意を求める。


「うん、モロッコに行ったのか、エジプトに行ったのかはわからないけどね。それより、ロンのことが心配だよ」


ヒロがそっと神殿の前の人々から離れると、ケンも同じように離れ、二人はロンのいる大型船に向かった。


大型船の船室の中に、ミウ、マリ、サーヤの姿が見える。

近づくと、床に横たわったロンの頭をサーヤの両手がつつんでいた。


「サーヤ、ロンの容体はどうなの?」

ヒロがたずねると、サーヤはゆっくり首を横に振った。


「意識が回復して、ケガも治るはずだけど、時間がかかりそうね」


*** おーい、ヒロ、影宇宙かげうちゅうの中にケガ人用のベッドがあるよ・・・

突然、タリュウが天から顔を出した。


「あっ、タリュウ、ちょうど良かった」

ヒロがほっとした表情で天をあおぐと、タリュウの口の中にロンとサーヤが吸い込まれた。


「俺たちも影宇宙に戻りたいな」

ケンの声に応えて、ジリュウ、サブリュウ、シリュウが天から顔を出した。


三匹の竜の口の中に、ヒロ、ケン、ミウ、マリ、サスケ、カゲマル、コタロウ、ヒショウ、ハンゾウが吸い込まれた。


「2節 オリンポス惑星の住人」に続く

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る