第14話 1節 アトランティスの最期(13)

「一番上に書かれているのは、アトラス神の父と母、ポセイドン神とクレイト神だ」


ディプレ王の言葉にケンが思わず大きな声をあげた。

「えーっ、ポセイドンって?!」


「なぜ、そんなにおどろいているのか?」

ディプレ王が、ケンの顔をじっと見つめると、ヒロが話し始めた。


「実は、ある国に行った時に、ポセイドンという神の話を聞いたことがあるんです。その国の指導者は、デウスという神から街造まちづくりや建物建設の技術をさずかったそうです」


「おーっ、これは驚いた。君たちが最初に見た建物や街の絵の上に文字が書いてあるだろう。それは、デウス神に教えてもらったものだ、と書いてあるのだ」

ディプレ王が、その文字の方に近づいて、文字と絵を指し示した。


その時、地面がゆっくりとれて、神殿の外の人々がさわぎ始めた。

皆が神殿の外に出ると、東の空が暗くなった。


「十年前の津波の時より、揺れ方が大きい。ひょっとしたら大津波が来るぞー」

「地中海の火山島が大爆発したんじゃないかー。十年前の時より、東の空が暗いぞー」


神殿のまわりに集まっていた人々が、不安な気持ちを口に出してディプレ王の言葉を待っている。


「みんな、子供と年寄りを丘の頂上に集めて神殿の中に避難させよう。他の者たちは全ての船を出して、東の方角に向けてゆっくりと進めよう。最初の津波が船の下を通り過ぎても油断せず、最後の津波が通り過ぎたのを確認してから港に戻るんだ」


ディプレ王がそう言うと、すぐにケンが声をあげた。

「俺たちも手伝います。子供たちをハンゾウに乗せて避難ひなんさせよう、サーヤ」


「ケン、わかった。私について来て、ハンゾウ」

ケンとサーヤがアトランティスの人々の後から走り出すと、コタロウとハンゾウが後を追った。


「僕たちも手伝おうよ、マリ」

そう言って、ロンがマリの手を引いて走り出す。

ヒショウはマリの上を飛んで行く。


「神殿が津波に飲み込まれたら大変なことになるよ、ヒロ」

暗くなってくる空を見上げてミウが心配すると、ヒロが千里眼の術を使って東の海を見つめる。


「津波が、大きい津波が、東の方からこっちに向かって来てるぞ。ほんとに神殿が飲み込まれるかもしれない」

ヒロの言葉を聞いて、ミウがディプレ王に駆けよって行く。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る