プロローグ7
「やあ、りーちゃん。転生者連れて来たよー」
しばらく待っていると、もう1人の転生者が連れてこられた。
今回は前回の反省を生かし、小説を取り寄せ、読んで待っていた。
「あー、はいはい」
本を閉じ、そこら辺に置く。
故意に重力を加えない限り無重力なので、本当にそこら辺なのだ。
神様が連れて来た転生者は、26歳と言った所だろうか、この世界では婚期が過ぎている男性だ。
余談になるが、現在、この世界の婚期は18~22歳と非常に短い。
その理由は、死亡率が高い事と、どこもかしこも生産向上法という馬鹿な法律によって結婚できる年齢が決まっているからである。それで何故か成功している国が多い。
◇◆◇◆◇
「説明はこんな感じだけど、何か質問あるかな?」
テルと同様に、この世界について説明した。
「何個か質問があるんですが、よろしいですか?」
「はい、どうぞー?」
「まず、貴女について聞きたいのですが、一通り説明を貰えますか?」
驚いた。そんな人は今までいなかったな……。今回の転生は中々いいものだな。
「私かぁ。私は、さっきも説明したけど、リーフィ。この時空間を管理するもの。この時空間における神様とみて貰っても構わないです。――」
「そこで1ついいですか?」
男性が軽く挙手する。
「はい、どうぞ?」
「この時空間における神様という事は、他の時空間が存在し、それぞれの時空間に、貴女のような管理者がいるという事ですか?」
「そうですよ? 極稀に例外として管理者がいない場合もありますが、そういう場合は神様――ここに連れて来たチャラいバカが管理しているんですよ」
「え……? あの人が……?」
うん、驚くよね。物凄く判るよ。あいつは所謂初見殺しだから。
「ああ、はい……。――続けて下さい」
「種族として、私は人間に属します。それ――」
「そんな人が神様になれるんですか?」
「ちょっとー、これから話すので、待って下さい!」
「あ、すみません……」
「――それなのに
「1つだけ不明な点があります」
「はい、何ですか?」
「寿命は大丈夫なんですか?」
「寿命? 止められるから問題ないよ?」
「なんですと!? どうやっているんですか!? 教えて下さい!!」
酷い喰い付きようだ。
「ごめんね、これは教えられる様な物じゃないから、ちょっと無理ですねー」
感覚的な物であるから、教えるというのは到底出来る物じゃない。
強いて言えば、時間の流れを感じ、それに対して抵抗していくようにすれば伝授は不可能ではないのだが、通常、時間の流れなど、普通の生命には感じる事すら出来ないので、不可能と言った方が正解である。
「そこをなんとか!!」
「いや、じゃあ、腕の動かし方を教えられますか?」
「……そういう事ですか……。諦めます」
そう言うと、存外素直に引いてくれた。
「さて、それで転生後の能力補正はどうしますか?」
自分の事について、今話した事だけでは自分自身でさえ十分には程遠いと感じるが、説明がこれ以上長くなるのは流石に面倒くさいので、気付かれない様に話を終わらせる。
「あ、もうちょっと――」
「転生後に話しに行きますからっ!」
「あ、はい……」
◇◆◇◆◇
――何とか、男性の転生の処理も終了した。
最後に訊いたのだが、名前は「クヌギ」と言うらしい。
――さて、「テル」と「クヌギ」、今回の転生者2人はとても面白そうだ。これまでにない、何かをしてくれそうで。
でも、元の記憶、所謂前世の記憶が戻るのは6歳を過ぎた頃なんだよな……。
6年。この世界を管理している時間に比べれば、それは刹那のようなものだが、楽しい事が目の前にあると判っていると、どうしても退屈してしまうものだ。
「どう? 今回の転生者は」
「6年が悠久に感じてしまいそうだ」
「それは良かった、りーちゃん」
「ありがとね、フォルテ」
「それはどういたしまして」
――これは、神と管理者の2人による、永い永い生の一抹。しかし、この一抹はどんな悠久より永く、そして濃い――
――ただの暇つぶし。
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