第72話 フィナーレ
体育大会は、午前と午後の部に別れている。
午前は、トラック競技が主体。
午後は、一年生による『集団行動』と三年生による『集団ダンス』が披露されて終幕となる。
一年生の『集団行動』は、毛利先輩からも武田先輩からも、「野次がすごい」ときいていたが……。
正直、「マジか……」と思うレベルだった。
交差で少しでも失敗すると、観客席の上級生からブーイングと非難が容赦なく浴びせられ、中心がずれると、「どうなってんだ! 今年の一年!」、「ふっざけんな!」、「恥さらしっ」と怒号を浴びた。本物の罵声というものを、俺は初めてぶつけられた気がする。
だが。
ひとたび、ぴたりと停止線が合い、すべてのピースが当てはまったような動きをしたとき。
指笛や「ハラショー」の歓声。
大拍手と、打ち鳴らされる打楽器。
そして二年生と三年生によるウェーブが始まる。
なんというか。
この、『歓声』と『応援』に胸が詰まった。
体育教員たちに押しつけられたような「集団行動」ではあったし、こんな演舞、誰が見るんだと、辟易していたが、この先輩達の応援に、俺は来年、絶対下級生に同じ気持ちを味あわせてやろうと思った。
さて。
工業化学科の順位だが。
下から二番目の順位で、野球部と同じく結構落ち込んだ。
文化祭でも勝てず、体育大会でも勝てない。俺たちは一体、何で勝てばいいのか。
そんな風に思っていたが。
同じ科の先輩からは、「例年通りだ、落ち込むな」と言われた。
唯一、今年。
我がクラスが高得点を上げたもの。
それは、例の『ジョジ〇のクラス旗』だった。
グランドにたなびくそれは、クラスメイト全員で手直しし、色を塗り直したリアルな『ジ〇ジョ』だった。
「見たか、デザイン科っ!! どやぁぁぁ」
クラス担任が、何故かデザイン科の教員を指さして叫んだのが印象深かった。
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