十五人

 妻の作るはしたない冷凍食品と惣菜によるはしたない手抜き指抜き弁当ばかりのその吐瀉物を私は落涙と嘔吐きでもう先長くないと一目分かる皺の刻み込まれた初老の指と平で掬い取りその全てを撮影で愉悦を行う若者たちの群衆ニヤケ暴力一方通行に屈した。


 勉学の為に友を捨て、女を捨て、女の人を捨て、シガラミやアツレキの道を歩き出した私は、私は、生真面目な社会人として世間に身を落とした。


 つもりだった。


 こんなことの為に生まれてきたのだろうか。


 安易な、即席な、即興の注意喚起を、真夜中零時過ぎ遊具寂れた第三公園で喚き散らす未来ある若者たちに放った途端力強いボウリングの玉のような鈍痛が群衆の一人のガムを噛む高身長の拳から私の鳩尾に発生し、私は、私は今日の思い出を口から第三公園緑の丘に垂れ落としてそのまま体躯も思い出の上に垂れ落とした。


 高身長から始まった「食え食え」コウルが、一人、また一人と捲し立てで増えていき、その様はまるでシュプレヒコール大喝采スタンディングオベーションのように耳と脳内に響き渡り、私は、私は、その数の暴力と実の暴力に畏怖して土まみれのそれ等を洟と共に覚悟を決めて飲み干した。


 人類をやめた気がした。


 少しばかりの歓声が鳴ったと思ったのち瞬時に終わり、彼らは娯楽を終えた面持ちで高く笑いながら私から離れていった。


 こんなことの為に生まれてきたのだろうか。


 友と、女と、女の人を捨てた人生が。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る