釈迦の歯ブラシ

 シャカシャカシャカシャシャカシャカシャカシャカと釈迦のオノマトペで小煩い、大きな歯ブラシでだた広い氷を磨く「かありんぐ」という、競う?闘う?努める?何だかよく分からんが点数が関係してくるとても本国においてとても大切な大会があるらしく、それが、今、テレビジョンの電源釦を点けたら画素上で行われていて、シャカシャカシャカシャカしとるなあと思いながら観ていたのだが、これはなんの美で加点があるのかが到底分からず、尿意を堪えつつ閲覧を続けたところ、どうやら昭和のガキがやっていた「おはじき」「めんこ」の要領で、相手?闘者?宿敵?のとても持ちやすそうなつるつるとしたどうしようもないアイロンの形をした恐らく石、を、これまたどうしようもない自前の石で、激しく、時にはフラットに、ぶつけて、氷上のミニマルなイラストからはみ出させるルールの元やっているらしく、ぶつけては騒ぎ、はみ出しては騒ぎという、異様な光景、非常識な映像を平和なこの午後に電波で発信しているので、これはいかんと放送局に自前の鮮やかな祖父の遺品である黒光り電話機で以てコールし、受話器の向こうの空調の音が確認できた瞬間に、石で遊ぶな危ない釈迦の侮辱は非常に危険的であるそもそもあの歯ブラシは何だホームセンターで売っていそうじゃあないかそんな安物で国を代表してええわけがない今すぐ放映と競いを止めろと非常に明朗快活に訴えたところ、どうやら相手は一定のリズムで「はい、はい、はい」と明らかなる話を聞いていない者のそれをやっていたようでワタクシそれで沸点が一気に達して、相槌でビートを刻むんじゃなーーーい、と伸びやかなボリュウムで更に訴えていたら、「はい、はい、はい」と共に、「シャカシャカシャカシャカ、シャカシャカシャカシャカ、シャカシャカシャカシャカ」と釈迦のオノマトペが受話器から聞こえてきて、流石にこれは恐怖、畏怖で、がちゃんと遺品も憚らず乱暴に通話を切ってしまい、恐ろしさからくる、ハアハアゼアハアという過呼吸が始まってしまい、まずい、落ち着かねば、と、安寧出来る事柄を想像して副交感神経を整えていたら、私のハアハア、ゼアハアに合わせて、シャカシャカシャカシャカ、シャカシャカシャカシャカと、背後からどんどん釈迦の歯ブラシが聴こえてきて、ワタクシ泡吹いて倒れてそのまま二日間寝てしまいました。あれから取っ手のある石は見ることが出来ません。

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