第12話 閃光
その
カリオスが
そして、彼が
つまり、2人が全くの無関係では無いと、容易に想像できた。
カリオスが会った青年が彼女の仲間を襲った人間と同一人物であるのかどうかは分からないが、その可能性は十分に存在する。
そうして、お互いに
王都からミスルトゥまで伸びている街道の脇。小さな広場にて野宿をしていた時である。
既にカリオスは眠りについており、その寝息が穏やかに聞こえる。
彼が起こした
そんな静寂の中聞こえたのは、何者かの足音だった。
耳を音の方へと向け、姿勢を低くした状態で様子を探る。
やはり、街道の先からこちらへと向かって近づいてくる音が鮮明に聞こえた。
距離があるのでぼんやりとしか見えないが、人影のようなものが確認できる。
「……一人。警戒した方がいいでしょうか」
そう呟くと、彼女はゆっくりと体を起こし、カリオスの下へと歩み寄る。
「カリオスさん。起きてください。誰かがこっちへと向かって来ています」
そう言いながら、彼の顔に鼻先を当てる。
すぐに目を覚ました彼は、目をこすりながらストレッチをしている。
「あれは、兵士でしょうか?なにやら武装をしているみたいですけど」
先程確認した足音に加え、金属のこすれる音が聞こえ始めた。
ただ、足取りは危うい。先程から何度か転びそうになっている。
「大丈夫でしょうか?」
思わず声に出してしまうほどに、その人影の動きは危うく感じられた。
一歩一歩こちらへと近付いてくるたびに、彼女の中の何かが
気が付けば、
そんな彼女の様子を見て取ったのだろう。カリオスが何やら慌てた様子でポーチから石を取り出し、焚火に投げ入れた。
彼女はあまり詳しくは知らないが、恐らく、焚火の中に投げ入れられた石がクラミウム鉱石と呼ばれるものなのだろう。
ただ、彼が火の中に投げ入れた意図まで理解できてはいない。
そこらの石ころを集め、
既に数十メートル先まで接近しているその存在は、人間の兵士のようだった。ただ、様子が明らかにおかしい。
歩き方や装備品など、様々な点で疑問点はあるが、最もおかしいと言えるのは頭の向きだ。
胴体はしっかりとこちらへ前進しているのだが、頭だけ背中を向いている。既に息絶えているであろうその兵士が、一歩一歩こちらへと近付いてくる。
「カリオスさん!」
彼女が叫ぶとほぼ同時に、カリオスの籠手が
その隙を逃すわけにはいかない!と、ミノーラはすぐさま兵士の下へと駆け出した。狙いは首。
未だ動く気配のない兵士の首へと、食らいつく。口中に広がる血液の新鮮な味と、骨の歯ごたえに納得したとき、ようやく、彼女は異変に気が付いた。
兵士の体から、何やら黒い紐のようなものが無数に出ているのだ。
自然と、彼女はその紐の先を目で追ってしまった。
数メートル先、彼女のことを見つめる大きな瞳と目があった。
理由は分からない。ただ、彼女はその小さな存在に恐怖を抱いた。人間ではない。動物でもない。
一応人型だが全体的にぬぺっとした
あるのはただ、大きな目が二つ。
真っ黒な体の頭部と思われる
得体のしれないそれの足元から、紐は伸びている。
「……グルルルルルルル」
突然の事に、彼女は
ヒタッ
彼女の様子を見たのか、それが一歩前に出る。
「来ないでください!」
自然と声が大きくなり、尻尾が後ろ足の間に入り込んでしまう。今すぐにでも逃げ出したいと焦りを抱き始めた時、彼女は自分の足元の様子に気が付いた。
「……これは!」
先程の黒い紐が彼女の前足に絡みついている。
いつの間に!と焦燥したとき、彼女の心の隙をつくかのように、それが動き出す。
ヒタヒタヒタヒタヒタヒタヒタッ!
異常なほどに高速で接近するそれに対し、彼女は逃走しようとするが、足が言うことを聞かない。まるで、地面に
「ひっ!」
思わず小さな悲鳴を上げた彼女は、次の瞬間の状況を飲み込めなかった。
カリオスがミノーラのすぐ
「何が!?」
「……カリオスさん?」
何が何だか分からない状況で、彼女はカリオスへと状況の説明を求める。そんな彼女の問いかけに
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