第7話 依頼
部屋に入ったミノーラが初めに目にしたのは、椅子に座った状態で動かない人間の男だった。
ただ、その様子からしてリラックスしているとは
また、口元には何らかの器具が取り付けられていて、何かもごもごと言っているようだが、言葉を聞き取ることが出来ない。
「彼は……?」
急激に身の危険を感じたミノーラは、なるべく目の前の女性二人を刺激しないように気を付けながら言葉を
「はい、彼はとある森の中で
腕の中で暴れるサーナを
「サーナさんが苦しそうですけど……?」
あまりに強く抱きしめているのだろうか、サーナはサチの腕を両手でひっかきまわしている。
そんな様子を見て
「だはぁ……死ぬかと思いました……サチィ!! いつもいつもアタシを殺すつもりですかぁ!!」
「なんのことでしょう? そんなことよりも、早く話を進めてはいかがでしょうか?」
「……まぁ、いいや。全く良いところなんて無いんだけど、とりあえずは置いておくとするよ。確かにミノーラを待たせるのも悪いし、そっちの男にも話をしなくちゃだからねぇ」
そう言って自分を落ち着かせたサーナはミノーラにウインクをすると、
男の隣に立ったサーナはミノーラに手招きをして近くに来るように
「紹介するよ。彼はカリオス君。まぁ、『
そんなサーナの説明の最中、カリオスと呼ばれた男は
「……拘束は解かないのですか?」
暴れまくるその様子に若干の
「拘束を解く必要は皆無です。そもそも、命を取るのがセオリーなのですから。サーナは甘すぎるのです」
そんなものでしょうか?と疑問を残したまま、ミノーラはそれ以上の追及はやめることにした。
今は意味があるか分からない追及をするよりも、話を進めてもらった方が
「アタシは甘くはないよぉ。って、そんなことはどうでも良いんだよ。いいかい、ミノーラ。これから本題に入るからしっかりと話を聞いてもらう必要がある。君にはこの男とチームを組んで、とある男を探してもらいたいんだ。君も会ったことのあるあの男だよ」
サーナはそこで話を切った。おそらく、ミノーラが頭の整理をすることを望んでいるのだろう。そして、その思惑通り、彼女は頭の整理をすることで手一杯だった。
あの男。
今の話で彼女が思いつく男は明らかにあの男しかいない。
ミノーラの仲間や家族を
その男はあの時、彼女に何らかの攻撃を加えたのは間違いない。そうでなければ、突然全身が震えあがり、体が動かなくなるなどありえないのだから。
そしてそれは、彼女が抗う事のできる
しかし、サーナはあの男を探せと言う。
探してどうするのだろうか?
そこまで考えが及んだ時、再びサーナが口を開いた。
「大まかな内容の把握はしてもらえたかなぁ? 具体的に言えば、君の仲間を殺した男を探して、見つけて、殺してほしいんだ。それほど難しいことではないでしょう? それに、君もそれを望んでいるんじゃないかなぁ?」
「そ、それは、確かに
「もちろん拒否してくれても構わない。どちらにせよ、アタシが取る行動は決まっているんだから、できれば引き受けてほしいんだけどなぁ」
先程までの冗談交じりの答えではない。どちらかと言えば、対応するのが面倒だという意思の方が強いようだ。
だからこそ、彼女は引き受けざるを得ない。
「……わかりました」
その答えを聞いて、サーナはにっこりと笑みを浮かべる。
「ミノーラとは仲良くなれそうだぁ! よぉし、せっかくだから空に向かって吠えに行こう!!」
そう言って元気よく部屋を飛び出していったサーナ。しばらく視線の行き場を探した末にサチと目が合ったのは言うまでも無い。
そんなサチは小さく肩をすくめると、サーナの後を追うように部屋を出て行った。どことなく楽しげな表情なのだが、それが表面だけに見えて仕方がない。
ぺろりと鼻先を舐めた彼女は、思い出したように耳を
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます