第10話 狂った思考の彼女
「さぁて、昨日は散々迷惑を掛けてきたみたいだし真面目に部活に取り組まないとな」
「先生鬼畜すぎんだろ……反省文3枚はマジで死ぬ……」
「停学にならないだけありがたいと思え。このバカ共が」
次の日の放課後、俺と桃ヶ池はとらのあなの一件で呼び出しをくらった。担任である住吉先生から直々に説教を受け、その上で原稿用紙三枚分の反省文。しかも厄介な事にただ文字を埋めただけではボツをくらう為、俺も桃ヶ池も完成させた頃には既に廃人と化していた。
「何度も何度もボツにしやがって、この未婚……」
「それ以上言ったらどうなるか知ってるよなぁ桃ヶ池? それにお前の反省文は反省しようという気持ちが一切伝わらん!」
「チッ……すみません、悪かったです、ごめんなさい」
休憩所のソファでうつ伏せに寝転がっている桃ヶ池が反省文に対して愚痴りだした。よっぽど気にくわないのか住吉先生に対してタメ語&敵意むき出しにし、完全に舐めきった態度を取っている。しかし、そんな桃ヶ池の態度に動じず威圧で従わせようとする住吉先生は流石だ。あれ、こんな学園ドラマどっかになかった?
「まあ、今日は部活の内容を説明する。言っておくがもし途中でスマホでもいじったら反省文追加で書かせるから覚悟しとけよ?」
「へーい」
「はぁ、イベント……」
「桃ヶ池、へ・ん・じ は?」
「はい……」
ソシャゲのイベントが出来なくてがっかりする桃ヶ池。気持ちはわかるが今回は相手が悪かったな、ドンマイ。
「うむ、よろしい」
「チッ」
もうその辺にしとけばいいのに……。懲りずに刃向かおうとする桃ヶ池には反抗期真っ最中の子供のような意地を感じる。ちょっと前まで真面目だったのにどうしてこんな事になってしまうのか不思議で仕方ない。
「さて、本題に入るぞ。今回設立したSNS相談部だが既にアカウントを立ち上げている」
「おっ、仕事早いっすね先生」
「まだ仮だがな。お前らの意見も聞きたいから一度見てくれないか?」
そう言うと住吉先生は俺達にSNSのアカウントを見せた。まあ所詮学校の部活だしそこまで変な箇所はないと思うが……
『詩島高校SNS相談部~気軽に質問してみたらまさかの結果に!?~』
……なんか後半youtuberがつけそうなタイトルだな。流行に乗っかるのはいいがこれじゃ怪しい宗教団体か何かに間違われるだろ。でもマズいなこれ。今ならまだギリギリセーフの段階だが説明文までこのノリを持ってこられるとかなりキツい物がある。
不安が押し寄せる中、肝心の説明文を読んでいくと……
『ハロー、ミ○イアカリだよっ!
今回はねー、なんと詩島高校と一緒に相談コーナーを立ち上げたんだ! いやーアカリも遂に学校法人とコラボする事になるとは……』
「「……いやダメだろこれ」」
珍しく意見が合ったのか桃ヶ池と声がハモる。ハモった時、桃ヶ池の機嫌が若干良くなり足をバタバタしていたのが印象的だった。なんだ、可愛げのある事するじゃんお前。
「やはりダメか……」
「ダメも何も、セリフとか丸々パクってるじゃないっすか。流行に便乗しすぎ」
最もな意見だ。参考にするならともかく、ミ○イアカリのセリフを丸パクリは流石にアウトだろ。
「そーそー、他所のノリをここに持ち込むとか寒すぎ。まさか、そんな事もわからないの先生?」
「うっ……」
俺達の容赦ない意見にうなだれる先生。いや仕方ねえだろ、ノリが寒すぎて後半読んでいくのが段々つらくなるんだからさ。若者に寄り添う考えはいいが時と場所を選んでほしい、と俺は残念に思う。
「まさか、住吉先生がここまでセンスないとはねー。正直ありえな、むぎゅ」
「はいはい、その辺にしとこうなー」
「んーんー!」
桃ヶ池の口に手をあて言葉を遮る。このまま放置し続ければ住吉先生が拗ねるか暴れ出すまでボロクソに言い続けるからここで止めて置かないと。てか、俺普通に女子に触っているけど後々大丈夫かな……
「まあ、うん。詳細はこの紙にあるから後は好きにしろ。アカウントも勝手に作り直していいから……」
「あっ」
プリントだけ残し住吉先生は休憩室を後にした。その後ろ姿はどこか悲壮感に溢れまるでクビを宣告された会社員みたいでなんか申し訳ない気持ちになる。仮とか言ってたけどよっぽど自信あったんだろうなぁ。説明文とかミ○イアカリが言いそうなセリフで構成していたしかなり作り込んだんだな先生。
「やーい、ざまーみろだ」
「お前も懲りねえなぁ」
「ボク的には物足りなかったけどなー。最低でもボロ泣きくらいはさせたかった」
桃ヶ池はやはり泣かせるまでやるつもりだったようで止めた事は正解のようだ。しかし、あれだけ怒られてるのにも関わらず住吉先生に復讐しようとする反骨精神はかなり凄い。でもその反骨精神、ここで使う場面じゃなくね?
「ねえ、今誰もいないしさ……する?」
「……するって何を」
「んーとねー。エッチな事、とか?」
「!?」
住吉先生がいなくなり、静寂が訪れた休憩室。服が擦れる音や息づかい等、普段聞こえないような音が聞こえ、二人きりである事を強く意識させていた。確かにここにいるのは俺と桃ヶ池だけだが、それだけで何故このような思考に至るのだろうか? 若い男女が密室で二人きりになりじゃあエッチな事しない? と誘われる展開、まさしくエロ本じゃないか。
「何のつもりだ……」
「んもー、主様ったら興味津々な癖に。現役JKの身体、触らせてあ・げ・る♡」
「っく……!」
ブレザーを脱ぎ仰向けになる桃ヶ池。ただブレザーを脱いだだけなのに身体付きがくっきりと見える。しかも股を少し開いてる為、桃色のアダルトな下着がチラチラ目に入った。こいつ……完全に誘ってやがる! そんな見え見えな誘いに童貞心を丸出しの俺が絶えきれる訳がない。気付けば一歩一歩、桃ヶ池のソファに近づいていき、本能のまま手を伸ばしている俺がいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます