リンに会いたい


 父と長いこと二人きりの生活だった、忙しい父の為にほとんどの家事は僕がやるようになっていた……


 特に料理は得意だ、新しい母さんに伝えると、凄く嬉しがってくれた。

 母さんは父さんと同じ会社、部署は違えど忙しさは同じ、やはりなかなか早くは帰れない、一緒に住むので家から会社迄遠くなってしまった為に揃って遅くなるようになった。


 あんな事がなければ妹と二人で当番制でご飯を作ったり、一緒に作って食べたりしたんだろうか?


 最初はなるべく父も母も一緒に食べようとしてくれていたんだけど、最近はもっぱら独りご飯、まあ気楽で良いけどね、妹が一緒だとメシマズ状態だしね……


 僕は冷蔵庫にあるおかずを出しレンジで温め、その隙に肉と野菜を手早く切り、さっと炒める


「はい出来上がり~~いただきま~~す」



 野菜炒めは火力だな~~もっと火力が欲しい、でもウマウマ


「あいつはご飯食べてるのかな?」

 凄く痩せている、そして部屋から全然出ない……学校から帰って部屋に籠りきり……

 まあ僕も人の事言えないけどね~


「それにしても、こんな生活いつまでも続けられないよな……」

 二人きりの時間が増えるほど居心地が悪くなってくる……、兄として年上として改善しなくちゃいけないのかも……


 僕はそんな事を考えつつ手早くご飯を食べ洗い物を済ます……


 そして部屋に戻りPCを見つめる……いつもはこの後またネトゲをするんだけど、リンはまた明日って言ってたな……今日はもう来ないのかな?最近夜中まで話す事がなくなってきた気がする……去年の僕と一緒……


「ひょっとしてリンって……受験生?」


 僕は推薦だったけど成績は落とせないから、去年は夏休み前の今頃、夜中のログインは少し控えた……リンも最近夜中迄は一緒に居なくなった……つまり……



「そうか!リンって高3か!」

 大学受験か……、リンって頭良さそうだし良いところ狙ってるのかも……

 ああ、でもつまり頭が良くて、聡明で、明るくて……


「うう絶対にモテるよな……大学に行ったらサークルとか入ってネトゲから離れゃうんじゃ……それどころか、チャラいサークルとかに入って、新歓コンパでチャラい先輩にお持ち帰りとかされて…………やだああああああああ、リン~~~~~~~行っちゃダメだ~~~」


「いや、ひょっとして今も居るんじゃ、彼氏と一緒に僕を見て笑って「こいつ、いつも私にべったりなんですけど、超うけるんですけど」とか言って……彼氏が「童貞野郎をからかうなよ」って隣で言ってたり、うう……どうせ童貞ですよ……」


「いや、リンに限ってそんな分けない!僕の理想の人なんだから……多分おしとやかなお嬢様で、しっかりしているから年上のお姉さまみたいな人だよ、うん、チャットからも気品が溢れているって言うか」


「芦屋か成城か、成城が良いな~~芦屋は遠いからな~~でも来てなんて言われたらすぐに行っちゃうけどね、世界中どこへでも行っちゃう」


「リンに会いたい、リンに会いたい、リンに会いたいよ~~~どこに居るの……僕のリン~~~~」

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