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「ヤマギシさん、俺のこと知ってるのかな?」

 え? 何だって?

「いつも挨拶だけで雑談とかもしたことないし、もしかして俺のこと知らないのかもしれません。さっきも微妙な顔だったし」

 えーっ自分でも分かってんのかーいっ! それならなおのこと、知ってもらわないと!

「でしたら、うちの店を口実にしてはいかがですか?」

「え? こちらのお店を?」

「人と言うのは共通の話題があると盛り上がれるものです。それなら多少は誘いやすいかと。あと、お誘いあわせでご来店いただければうちとしても嬉しいですから、なんてね」

 ある意味営業活動だけれど、もしそれでこの人の背中を押せるならいいじゃない。一挙両得、一石二鳥ってね。

「話題に出すだけでも、意識に残るかもしれません」

 ちょっと失礼かもしれないけど、ヤマギシさんの気に留めてもらおうと思うのならこれくらいは。

「・・・そうですよね。わかりました。今度お会いした時に話してみます。それで上手く行けば今度はこちらに飲みに」

「えぇ、お待ちしております」

「頑張って飲みに来ますね」

 男性は一際明るく微笑むと、今度は嬉しそうにグラスを傾けた。

 そこではたと気付く。もしも、ヤマギシさんが言っていた、何度も夢に出てくる知らない男性がこの人だったら・・・夢は記憶の整理、無意識にこの男性を夢に登場させていたとすれば・・・なんてね。そんな夢みたいな事そうそうないよな。人の夢を覗き見出来る訳でもないし。

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