5日目

「愛について?」

「そう。愛について。敦君、前私に唐突に聞いてきたよね。愛についてどう思うかって」

「確かに聞いたけど………でも、なんでもう一回聞く必要ある?」

………それは、確かにごもっともだけど、でも、これはさっき敦君がネット小説を読んでいるってことを知って思いついたことだけど

「敦君は、ネット小説を読んでいるって言ったよね」

「うん」

「それで、あの日愛について語ってくれた日からも、いろいろな作品を読んできたと思う。だから、愛についてのどう思っているかも変わっているじゃないかな?」

「考えが変わっているかってこと?」

「そう」

「うーん、確かに変わっているかもしれないけど、そんなに変わっていないと思うけど?」

「変わったことがちょっとでもいいから話してくれない?」

それでも、敦君は煮え切らなくて、「意味あるかな………」と呟いていた。

私はどうしても敦君の思う、"愛"を知りたい。

特にこれと言った理由はないけれど、唯普通にもう一回聞きたいと思ったから。

でも、このままではたぶん言ってくれないだろう。

………なにか、ないのかな?敦君からもう一度愛について語ってくれるような理由は。

私は、考えた。

そして、私は1つの考えが浮かんだ。

「あのさ、敦君」

「?なに?」

「さっき私、ネット小説をあげているって言ったでしょ。だからさ、その取材として聞きたいんだ。次作はさ、愛を題材にして書きたいと思ってるからさ」

私が考えた末に出てきた答えはこれだった。

次の作品のための取材として聞くことだった。

そうすれば、語ってくれそうだったから。

「そう?なら、いいけど」

敦君は少し照れながらそう言ってくれた。

「じゃあ、言うよ。俺は前は愛というのは………ってそういえば、俺そこまで言ってなかったね」

そこで、私もあ!と思った。

てっきり、敦君は愛とはなにかと言っていたと思っていたけど、敦君はそこまで言っていなかったんだ。

……じゃあ、やっぱり聞いておかないと。

「たしか、あの時は、俺は、愛さえあればって言うのは愛というもの無機質にしているって言ったよね」

「そう言ってたね」

「今でも、愛さえあればって言う言葉は、愛というものを無機質にしていると思うよ。でも、愛とはと聞かれたのなら、俺は素敵なものだって言うかな」

「素敵なもの?」

「そう素敵なもの。えーと、これは昨日読んだ小説に、You know you’re in love when you can’t fall asleep because reality is finally better than your dreamsってあったんだよね。ちなみにこの意味分かる?」

私には、日本語訳をすることができなかった。

「分かんないかな」

「そうだよね。名言ではあるはずなんだけど、よく知られていない名言だろうから。

で、さっきのYou know you’re in love when you can’t fall asleep because reality is finally better than your dreamsの日本語訳はね、いいかい?恋に落ちると、夜も眠れなくなるときがある。なぜかって言うとね、結局現実の方がキミが思い描いていた夢の何倍もステキだってことさ。

ってなるんだ。これを言った人は、ドクター・スースさんって人だよ。で、この名言では、恋に落ちるとってなっているいるけど、俺のなかでは、恋とは愛情に似ているものだと思うんだよね。

だって、恋から愛情へと変わっていくものだろ。愛情を想い人に与えることができる。それって、夢だと愛情を与える妄想しか無理だけど、現実だとしっかりと愛情を与えることができるだろ。それって、夢よりも何倍も素敵なことだと思うんだよね。だから、俺は愛とはと聞かれたら素敵なものだって答えると思うよ」

私は感動した。

それにやっぱり人によって愛と聞かれた時に答えることが違うのだなーとも感じた。

私のお父さんは、愛とはと聞いたら、愛と愛情を比較していて、愛が一方通行なもので、愛情とは双方が持つものと言った。

お母さんは、愛とは一方通行なものと言った。

そして、敦君は素敵なものと言った。

愛とはと聞いた時に、3人が3人とも別の視点から話してくれた。お父さんは、比較して、お母さんは、愛だけで考えてくれて、そして 、敦君は、ドクター・スースさんという偉人の名言から考えてくれた。

私は、愛とはと聞いたら、似たり寄ったりな答えが多いと思っていたけれど、そんなのは私が唯思っていただけで、人の考えというのは、1人1人しっかりと持っていて、同じ考えなんていうものはないのだと実感することができた。

私が、なにも話さなかったせいなのか敦君は、少し困ったような表情で

「俺の話、つまらなかった?」

と聞いてきたから

私はできるだけいい笑顔で

「そんなことないよ。むしろ、面白かったくらいだからさ。それも、すっごく」

「そう、それはよかった」

敦君は、安堵の表情でそう答えたのであった 。


────────参考文文献───────

estorypost.com/名言・格言/ドクター・スース名言/

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