5日目

少し敦君のお母さんと談笑したあと、今私は敦君の部屋の前にいる。

………ああ、凄く緊張するなー。

それに、やっぱり私はとても不安を感じていた。

でも、その不安を払拭してくれるくらいに今の私は早く敦君に会いたいという気持ちが強かったから私は勢いよく敦君の部屋の扉を開けた。

部屋を開けた瞬間に私の目に入ってきたのは、敷布団で寝転がりながら携帯を見ている敦君だった。

それにイヤホンも着けているみたいで私がなにか話したところでなにも反応してくれない。

………ああ、折角敦君の驚いた顔が見れると思ったのにな。これじゃ、無理だよ。

私は、敦君のバレないように敦君の後ろに周り込むと、敦君のイヤホンを取った。

イヤホンを急に取られた敦君はとても驚いていて、キョロキョロしていた。でも、後ろは見なかったから私の存在には気づいていない。

………気づいてくれてもいい気がするんだけど……ま、いいかな?敦君の驚いたところを見ることが出来たわけだし。

程なくして敦君は、諦めたのだろう。体を私の方に倒してきた。

私瞬時に正座に変えて、敦君が頭を倒してきた時に、丁度私の太腿に来るようにした。

そして、敦君の頭が私の太腿に乗った。

敦君の頭は、重たくて、でも凄く暖かった。

敦君も私の太腿に乗ったことで、必然的に上を見ることになって、やっと私と視線があって、私の存在を認識してくれた。

「え、えーと、何故いるんですか?」

「はあー、もうちょっと驚くとかないのかな?」

「いや、驚くもなにも………だって、もうなにがなんなにかわからなくてさ」

「そう。で、私が敦君の部屋にいる理由はね──

もうすぐ命がなくなる貴方に私の想いを伝えようと思って。

それが、私が言いたいことだった。

でも、私は言えない。敦君の命がもうすぐなくなるのを知っているからなんかじゃなくて唯私が、言えない。私は、ここにきてもヘタレなんだ。言おうとしたら、口がなにかに封じられているように感じて、口を開けられなくなってしまう。

だから、私はこう言った。

「貴方と少しお話がしたくてね」

と。

「俺と話しがしたくて?」

「そう」

「そ、そう………でも話しをする前に何故ここにいるのかを教えて貰ってもいいかな?」

「いいよ。敦君が学校休んでいたからお見舞いに来たんだよ」

「お見舞い?そう、それはありがとう………ん?でもそれだと少しだけ可笑しくないか?だって、さっき言ったよね、貴方と話しがしたくってて」

「ああ、それなら、お見舞いって方が表向きの理由で、本当は貴方と話しがしたかったからきたの」

「そう。それは、ありがとう。でも、俺話すことなんてあるかな?」

彼は、首を傾げる。

「あるよ。前敦君が聞いてきたでしょ愛についてって。それをもう一回聞いてみたくてね。と、その前にそのスマホに表示されているのってネット小説だよね?敦君好きなの?」

「ん?ああ、好きだよ。いろいろな作品が読めて、いろいろな人の考え方が分かって。でも、俺は紙も好きなんだけどね」

これは、私が知らないことだった。

敦君が、小説が好きだったことは。

「そうなんだー。で、今読んでいる小説はなんて名前の小説なの?」

「えーとね、『君が私の想いに気づくまで』って言うやつだよ」

私は、その名前を聞いた瞬間に、自分の顔が熱くなっていることに気づいた。

何故なら、君が私の想いの想いに気づくまでという小説は、私が書いて、投稿したものだったから。

「この小説さ、もの凄く続きが気になるんだよね。短編小説として完結しているんだけどさ、でもその最後は、もう気になる終わりかたで仕方がないんだよね」

私の顔は更に熱くなる。

自分の小説が褒められていると思うと妙に恥ずかしくて。

「でさ、この小説の…………ってなんでそんなに顔赤くしてるの?」

「ん?え、な、なんでもないよ!」

「そう?ならいいけど。でさ、この小説からはさ、もの凄く暖かみを感じるって言うかさ、ひとつひとつのセリフになにか意味がありそうで、その意味を考えさせられる小説だったんだよね。本当この人凄いと思うな」

私の書いた小説が、ここまで褒めらる程のものなんて思っていなかったから、凄く嬉しかった。

「その小説のPVってどのくらいなの?」

実は、私は小説を投稿したは良いものの見る時間がなくて自分の小説のPVを見ていなかった。

「PV?ちょっと待ってよ」

彼は、それから少しだけスマホを操作すると

「えーとね、PVが4000PVで、レビューの数が70で、フォロー人数が560人で、★の数が1600だね。それに、感想のところには続きは書かないんですか?っていうが多いかな」

私は正直ここまで自分の小説がここまで多くの人たちに見てもらえるなんて思っていなかった。それに、レビューや感想もいっぱいくれたみたいで、しかも感想の中には、続きを期待してくれている。それは、もの凄く嬉しかった。

「そう…………じ」

その時だった、部屋がノックされて敦君のお母さんが入ってきたのは。

「お菓子持ってきたから食べてね」

「………はい」

「じゃあ、私はこれで」

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