OZ 魔女と自動人形の倫理
@mizuaruka
プロローグ 虹の跡形
『虹の跡形』と呼ばれる場所がある。
かつての世界が壊れるきっかけとなった『四色の魔女』たちの戦争において、最も激しい局地戦が行われた場所の一つだ。
あらゆる魔力の光線が空を飛び、あらゆる呪いの光柱が地を満たした。たとえば赤。たとえば黄色。たとえば青。そして、たとえば、紫。
この世にあるだけの色に塗りつぶされたその戦場を、魔女の忠実な僕、『自動人形』たちが駆けた。魔女の魔術の中でも、最も奇跡に近いとうたわれる、『生命』を与えられた人形たちだ。
文字通りヒトの形をかたどったモノもいれば、四足の獣のようなモノもいた。鋼鉄の機械でありながら『生命』を宿されたモノもいたし、なんとも形容し難い、バケモノとしか言いようのない体躯を引きずって、戦場に踊るモノもあった。
彼らもまた、その肌や外殻に、様々な色を宿していた。たと たとえば銀。たとえば金。たとえば茶色。そして、たとえば、黒。
彼らは互いに殴り合い、互いに喰らい合い、互いに破壊し合った。
ありとあらゆる色の光が飛び交う中で、ありとあらゆる色を宿した人形たちが戦い合う。
『虹の跡地』で行われた戦いは、『四色の魔女』たちの戦争の中でも、最も華やかで、最も美しいものの一つだったろうと、遺された文献の目撃証言から、後の世では推測されている。
『虹の跡地』。
魔女が去り、戦いに疲れた自動人形たちが眠りに就いた今、その場所は一面の白い瓦礫と、どっぷりと暗い灰色の空に覆われている。
そしてそんな、灰色の空と白い瓦礫の間で。
「我が身に宿りし『青の魔女』の力よ、この左足に飛翔の標を、この右脚に破壊の徴を!」
蒼い閃光が、空中一筋、ひときわに輝いて。
その閃光の中で、一人の女性が、『寝ぼけた』巨大なイヌ型の自動人形の横っ腹に、飛び蹴りを一発喰らわせていた。
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