第7話
四匹いる。
こちらを見つけた怪物たちが、一斉にかじりついてきた。しかし、透明な壁の前では歯が立つはずもなく、次々と壁に衝突し、擦過音を立ててずり落ちていった。
喫煙所のドアとて例外ではない。スーツを着用したサラリーマンもとい怪物が、ドアに飛び付いたり剥がれたりを延々と続けていた。
「ドアが開いたらこっちに来ちゃうんじゃない?」
女性がドアから遠退き、怯んだ声で言う。聖二は前に回り込み、ドアを観察した。
「いや、多分平気だ。あのドアはレバーハンドル式だから、怪物が立ち上がらない限り開くことはない」
「レバーハンドル式?」
女性と大柄が同時に声を上げる。
知らないの、と言いかけて聖二は口を閉ざす。よく考えてみればレバーハンドル式という言葉自体知らなくて当たり前だ。
「トイレとかでよくある、取っ手を押し下げて開けるドアだよ。無闇に押しただけでは開かないんだ」
極力簡潔に説明する。女性と大柄は納得したようにうなずいた。
しかし、ドアがどんな形式であれ、中にいる怪物を倒さねば喫煙所には入れない。
女性は意を決したように割れた瓶を持ち直し、喫煙所のドアを開けようとする。
今まさに死地に向かおうとする彼女は、深く沈んだ面持ちだった。
「待ってくれ」
咄嗟に聖二は呼び止める。レバーハンドルを引き下げようとする手を押さえ、そっと瓶を引き取る。
「さっき助けてくれたよね?だから、今度はおれがいくよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます