A drop of water on a morning glory
エスカレーターでB1まで降りるその正面隅のコーナーで、久内さんとカヤノンが何やら1冊の本を覗き込んでいる。とっ、と着地した慣性で2人に歩み寄ると、2人が同時に振り返った。
「矢部ちゃん、これ!」
そのハードカバーの表紙をくるっ、と僕に向ける。
"A drop of water on a morning glory"
「”朝顔の露” だね」
「作者も見て」
Author "Moto"
「Moto・・・motto か」
さらに久内さんは、くるっ、と本をひっくり返す。
「あ、日本語だね。”朝顔の露” 作者:もと」
手渡され、ページをめくる。
「”朝顔の露より
「盗作?」
更にページをめくると今度は英語の文が出て来た。どうやら1ページごとに日本語と英語が交互に書かれているらしい。ただ、どちらが原文でどちらが対訳なのかあ分からなかった。そして、その合間に淡く美しい草花の水彩画が挿絵として描かれている。
「ここ、全国のローカル出版社を特集したブースだけどさ、その出版社って矢部っちの実家がある所じゃないの?」
最後のページに、”
「作者略歴も何もないね」
「わたし、買うよ」
「え、カヤノン、いいの? 紙の本なのに」
「2人とももう持てないでしょ」
久内さんの頭を撫でてからカヤノンはレジに向かった。
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