カツカレーのエネルギーで本屋三昧
東京駅で八重洲ブックセンターをまずは軽く下見する。その勢いで神保町へ行き、三省堂、書泉グランデ、東京堂書店をはしごした。
ここで午前終了。
「よし、並ぶぞ!」
土曜日だというのにキッチン南海は満員だ。平日は学食で済ませる近隣の大学生たちも遠征して来てるようだ。
運よくカウンターが3席同時に空いた。
「カツカレー3つ!」
「はーい」
痩せとちびの大食い。真ん中に挟まれた僕は両脇の女子の食いっぷりを見てしみじみ思った。
カヤノンの左隣の大学生らしき男子が彼女に声をかけてきた。
「ねえ君。どこの大学?」
「食事中に話し掛けないで!」
飯粒を吐き散らさん勢いでにべもなく拒絶された彼は、すみません、と小声でつぶやき、ミックスフライ定食を食べ続けた。
カヤノンが完食し、お冷やを飲み干すと、伝票の裏にシャーペンで何やら書きつけ、男子にすっ、と示した。
彼がそれを読み上げる。
「キンセイ大学?」
「違う!
「え・・・どこ、それ?」
「ネットで調べなよ!」
ちょうど僕と久内さんも食べ終わったので、まあまあ、とカヤノンをなだめながら店を出た。
怒りの収まらないカヤノンをなだめすかして古書店を引きずり回し、その後地下鉄に押し込んでようやく池袋に着いた。
「で、でかい!」
ザ・メガ書店。一体何冊の本がこのビルに詰まっているのだ。
「ああ、わたしの理想の書斎だわ!」
久内さんには悪いけれども、絶対にやめて欲しい。いくら本に飢えている僕でもここまでびっしりだと本に酔いそうだ。
さらに・・・さすがの久内さんも再び東京駅へ向かう山手線の中でとうとう音を上げた。
「矢部ちゃん・・・半分持ってくれる?」
「もちろん」
家出少女のようなボストンバッグ2つに今日買った本がぎっしり詰まっている。重い方を僕が持ってあげた。
「ごめんね。矢部ちゃんは買えないのに」
「いいよ。僕も本望だよ」
「あ、着いたよ」
重荷の無いカヤノンに先導されてスタート地点の八重洲ブックセンターに戻る。
ここで最後のあがきをするのだ。
「じゃあ、最後はそれぞれ単独行動、ってことで」
カヤノンは文芸新刊本の階へ。久内さんは資料集めだと言ってホビー書のコーナーへ。カヤノンが訊いてきた。
「矢部っちは?」
「うん。経営書見て来る」
「経営書?」
「そう。経営者が書いた体験記っていうか、実学書って、キャラクターがすごい魅力的だから」
「へえ。やるじゃん、矢部っち。ちゃんと頭使ってんじゃん」
「切実だからね」
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