セーラー服と日本刀

草風水樹(くさかぜみずき)

「女子高生帯刀令!?・①」

―――かたな


――刀、刀、刀!


 通勤通学の時間帯。それぞれの「学校」の女子生徒たちが、それぞれの学校の「制服」を着て、街を行き交っている。だがその女子生徒たちの腰を見ると、今やそこには、誰もが本物の「日本刀!」をたずさえていた。


 いや、女子生徒では年齢の範囲が広過ぎるだろう。日本刀を帯刀して歩く女子生徒、それはみんな……




 「女子高生」なのだ!!




 そう!日本刀を携えていれば女子高生という訳なのだ。つまりは、日本刀を持つ事が「女子高生の証」という時代であった。


 帯刀姿が当たり前となった今だが、そんな中に腰に差した日本刀をアチコチで、人や物にぶつけたり、ぶつかりそうになりながら歩いている者がいた。


「あー!すんません!!おわっと!頭を下げてたら、他の人にも当たりそうになったーーー!!」


 その者は、耳出し姫カットのサラサラ黒髪ロングストレートで、皆が振り向くような美少女だった。そんな美少女が謝る為、頭を下げた際に隠れた耳を出そうと、サラサラの黒髪をかきあげ、もう嫌だ!という顔をしながら――


「あー!ホント、日本刀って重いし、人に当たるし、メンドクセー!!こんな”クズ棒”さえ無ければ、オレが困ることなんて無いんだよ!!」


 と、腰に差した日本刀を左手でパンパン叩きながら悪態をついていた。


 この美少女!特に目が印象的で、ジッ見つめられたら、心まで持って行かれそうな切れ長の二重!で、そしてさらには右目に、見ると胸を締め付けられ、身を捧げたくなるような、泣きボクロがあった。


 そんな容姿端麗な少女の制服は、紺の大きなえりに白の三本線が入った、夏服のセーラー服で、白い半袖がとても涼しげに見えた。そして、その襟には1年生を表す桜色のバータイが、手結びで結ばれていた。


 スカートは、丈の短い紺のミニスカートで、そのすそからは、黒いストッキングのあしが伸びていた。黒のストッキングは30デニールで、足元は黒のローファー《紐なし靴》を履いているのだが、それは普通のストッキングと「なまめかしさ」を別にしていた。


 なぜなら黒いストッキングは、ただのストッキングではなく、容姿端麗美少女が歩くたびに、ミニスカートとストッキングをつなぐ「細い紐!」がチラチラと見えていたからだ。

 

 その細い紐は、ミニスカートの中、腰のガーターベルトから伸びている紐で、その先のハングと呼ばれる留め具が、太ももまでのストッキングを吊っていた。これはいわゆる「ガーターストッキング」と言うもので、略して「ガースト!」と呼ばれている物だ。


 そう!歩くたびにミニスカートのすそが揺れ、時折、ストッキングとガーターベルトをつないでいる「吊り紐」が見え隠れする事で、艶かしさを格段のものにしていたのだ!!


 そんな艶かしい容姿端麗美少女が日本刀を腰に差して歩いているのだ!それはまさに「セーラー服と日本刀」が織り成す究極の……



 

 「超絶美少女女子高生!!」の降臨だった。




 だが、しかし―――


「にっ、日本刀に向かって、クズ棒って!?ちょっと刀子とうこちゃん!言葉が悪すぎだよ!!みんなが溜め息つくほど綺麗で、可愛いんだから、もっと丁寧に話そうよ!!」


「何言ってんだ鞘乃さやの?もっと丁寧にだって!?これがオレの……ふ・つ・う・の話し方なんだよ!!」


 刀子は胸を張って、悪態をついた。 


「ええっ!?普通って!?えっとね刀子ちゃん、ハッキリ言って、そのオレって言うのも……ど・う・か・と思うよ!?」


 悪態つきまくりの超絶美少女の刀子に、地味目な感じの鞘乃も負けじと言い返していた。


「ええっ!?オレは自分の事、わ・た・し!だなんて、ぜってー言えねーよ!それって、めちゃくちゃメンドクセーよ!!オレはオレなんだよおおお!!!」


「だから~!その言葉使い~!!」


 刀子に言葉使いで注意をするクラスメイトの鞘乃は、背が刀子の胸ぐらいで、細い黒縁くろぶちの丸眼鏡をかけた、栗色お下げ髪(三つ網ではない!)の少女だ。


 お下げの髪は、髪と同じ色の栗色のゴムで留められていたが、このお下げが物凄く地味さをかもし出していた。が、本人は至って気に入っていた。


 さて鞘乃は、ややタレ目で優しい感じの顔立ち、さらには物腰の柔らかい少女で、将来いいお嫁さんになるね!と言われるような少女だ。そして刀子と同じ桜色のバータイにミニスカのセーラー服を着ていた。


 だが、レッグウェアは違っていて、白の「ハイソックス」に紺の運動靴を履いていた。まあ、このハイソックスや運動靴もまた、地味さを加速するののだが、鞘乃は好んで履いていた。


 ちなみに、当たり前かもしれないが、ハイソックスとは膝下までの長さの、ごく一般的な靴下の事である。


「てか、この日本刀!マジでどうにか、ならないのかなあああ!!クッソ邪魔なんだよおおおお!ウヘー!!!」


 再び、バンバンと日本刀を叩く刀子。


「刀子ちゃん仕方ないよー!法律で決まってるんだから、頑張って歩こうよ!!」


「あー!はいはい!!」


「そんでもってガニ股で歩かないの!!」


 感情がたかぶるとガニ股になるのが刀子のくせだった。


「そもそも私たちは、1年生に成り立てなんだから仕方ないよ!だから慣れたら腰に差した刀も、人や物に当たらなく歩けるようになるよ!!」


 そう鞘乃は刀子をなだめながら腕を大きく元気に振って歩いた。


―――ボヨンッ!!


 鞘乃は刀子の胸ぐらいの身長、148センチなのだが、胸は刀子よりも遥か彼方に大きく、Gカップだった。そんな胸なので、文句を言う刀子に向かって、腕を大きく振り元気に歩いて見せたものだから、胸がボヨンボヨンと腕の動きに合わせて、これまた大きく弾んでいた。


「なあ鞘乃ぉおおお!!その胸は嫌味かぁあああ!?」


「いっ!いきなりそんな事を言わないでよ!!」


「じゃあ、揺らすなよぉおおお!!」


「勝手に揺れるんだから、仕方ないじゃん!!」


 そう言い切る鞘乃に対して刀子は、自分のセーラー服の胸カバーをつまみ、中身をのぞいた。


「くうーっ!」


 そこには少年のような胸!つまりは少年の胸に、ピンクのラムレーズン!!があり、刀子は鞘乃に向かってこう叫んだ。


「ちっ、ちっぱいをバカにすんなー!!」


 いや!刀子はっている。本当は、ペタパイだ。膨らみさえ無いのだ。


「わー!刀子ちゃん。それって、物凄ーくひどーい、被害妄想だよねー!てか、大きいのもそれはそれで、大変なんだよ!大きいと、可愛いブラが少なくて選べないんだよ!選択の幅が狭いんだよ(∩_∩;)!!」


 困ったように言う鞘乃。ちなみに刀子はノーブラだ。


「ばっ!馬鹿にしやがって!!ぶっ!ブラなんかしなくても、生きていけんだ!!」


 もはや、開き直ってのノーブラだ。てか、物凄くブラに憧れているのは刀子だった。


「とっ、刀子ちゃん!」


「そんな、憐れんだ目で見るな!!」


 そうそう刀子の乳首は基本陥没で胸ポチが見える事はないが時々、セーラー服にこすれて痛い時のみ絆創膏を貼っている。ちなみに現在の状況は、ピンクのラムレーズンのホドホドな状態だ。


 じゃあ、刀子はキャミソールとか着ろよ!と思うかも知れないが、刀子は暑がりの為、セーラー服の下は、即ノーブラなのだ!!


 その時!


―――スッ


 刀子たちの後ろから、静かに抜刀ばっとうをし、両手で刀のつかを持つと、上段に構える女子高生の姿があったのだった。


つづく

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