不忍池
水があるところが好きである。橋の上から名も無い川を覗いたり、潮風にあたりながらただじっとしていることが何よりも心地よい。しかし、流れのない水はどうも好きになれない。中でもこの不忍池は最悪と言っていいかもしれない。
春や夏はまあいいのだが、蓮が生首のようにポトリと花托を落とすと一挙に地獄がやってくる。まず、その花托が穴だらけで気色が悪い。一つでも落ちていたら血が凍るほどに恐怖を覚えるのだが、それが百や二百固まっている様は悍ましいとしか言いようがない。さらにその臭いである。蓮自身から漂っているのか、若しくは流れを塞き止めてしまうために水が腐っているのか分からないが、独特の嫌な匂いを放つのである。これがなかなか慣れることが出来ない。
また、上野に限らないが、そのころ銀杏も時期を迎える。何処の道を歩いてもぷんと匂ってくるあれは誰でも覚えがあるだろう。蓮と銀杏と二つに襲われてはたまったものじゃない。地下鉄に逃げ込んでも、誰かの靴の裏にこびりつき何処までも追いかけてくる。銀杏など何故植えるのかと思う。実は勿論だが葉もそこまで綺麗だとは思わない。風の強い日に葉が舞っていて、おっと思ったことが有るが、私が普段目にするのは雨の日のあとに排水溝近くでこびりついたぐちゃぐちゃの葉である。あれを綺麗と言うならば何も言うまい。
さらに冬である。不忍池の周囲はスケートリンクへと変貌を遂げる。足を取られないようにペンギンのような歩き方になってしまって間抜けである。靴の中まで濡れてしまうと、もうどうしようもない。あれだけ人通りがあるのだからしっかりと除雪してほしいものだ。
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