味噌ラーメンと牛丼

お先真っ暗なクロのスケ

第1話 『ささやかな休日の贅沢』

 労働者ならば誰しも休日が楽しみであり、それは私にも例外なく当て嵌まる。

 隣町の会社に勤める私は、毎日車を走らせ、出勤していた。

 道中考えるのは、週末休みの過ごし方。

 待ち遠しくて仕方なく、仕事中もそればかり考えている。


 では、具体的にどのような休日の過ごし方をしているかと言えば、特筆すべき点はない。

 どこかに遠出するわけでもなく、家で大人しく読書をしていることが多い。

 それが楽しいかと問われれば、別段そんなことはなく、退屈と言える。

 しかし、幸せとは往々にして、そんな何気ないひとときから生まれるものだ。


 近頃、私はちょっとした幸せを感じている。

 それは休日のささやかな贅沢。

 とはいえ、大それたことではなく、簡単に言えば外食である。


 休みの日は一週間頑張った自分へのご褒美として、外で昼食を食べる。


 それが最近の私の習慣だった。

 もっとも、混雑しているような場所は嫌いだ。

 ご飯くらい、ゆっくりと静かに食べたい。

 だから、どこかの店に入って食べることはまずない。

 では、どのようにして望みを満たすのか。

 私は考えに考え、そして閃いた。

 ドライブスルーのシステムを利用すればいい。


 最初は、ハンバーガー店のドライブスルーを利用して昼食を摂っていた。

 これは素晴らしい仕組みであり、わざわざ来店する手間を省くことが出来た。

 迅速さを何より優先して、クーポンの類は用いない。

 セットのドリンクはコーラで決まり。

 商品を窓口から受け取った後は店の駐車場でそれを食べた。


 店内は子供連れが多いこともあり、騒がしい。

 別に子供が嫌いなわけではないが、敢えて中で食べようとは思えない。

 静かな社内でスマホを眺めながら、モシャモシャ咀嚼。


 数週間それを繰り返して、ふと思う。

 これは流石に飽きる、と。

 期間限定商品を毎週出してくれるならともかく、毎週同じものは食べたくない。

 では、定番商品の中でローテーションすればいいかと言えば、そうでもない。

 正直、ラインナップの中で美味しいと思えるものは少なく、冒険する気は乏しかった。

 それに注文の際に悩むのが嫌だ。

 せっかくのドライブスルーなのに、悩んで無駄な時間を使うなど、愚の骨頂。


 というわけで、ハンバーガー店は見限って、次の店へ。

 早さを重視する私は、とある店を訪れた。

 そこは、早い! 安い! 美味い! で、おなじみの牛丼屋。

 来店して食事をすることは主義に反するものの、時間帯をずらせばさほど混み合うことなく、すんなりと席に座ることが出来る。

 そして注文してすぐに出来たての牛丼が出てきた。

 まあ、具材は既に煮込まれており、それをご飯にぶっかけるだけなので早いのは当たり前なのだが。

 それでもハンバーガー店よりは美味しいと思える商品が多く、それなりに楽しめた。


 しかし、またしても、ふと思ってしまう。

 ご飯と一緒に、麺類も食べたいと。

 豚汁などでは物足りなかった。


 無論、牛丼屋でラーメンなど提供してくれる筈もなく。

 ここでは駄目だと、私は再び新天地を探し求めることに。

 そして見つけた。

 私の望みを叶えてくれる、楽園を。

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