もういないあなたの
不意に甘い香りが鼻をくすぐった。その香りに胸を掻き毟られるような懐かしさを感じて振り返る。
「あ、」
声に驚いたように振り返る男性の姿。見開かれた瞳、揺れる赤みを帯びた髪の毛、
「すみません」
咄嗟に頭を下げて早足で歩き出す。馬鹿な自分が嫌になる。鼻の奥が痛んだ。
あの人はいないのに
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