ツギハギの記憶

カゲトモ

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「変な夢をみるんですよ」

「変な夢、ですか」

「あんまり夢はみない方なんですけど、この夢は何度もみてるって言うか」

「何度も同じ夢を?」

 それ普通に怖くない?

「いや、厳密には同じってわけじゃなくて、いつも同じ人が出てくるんですよ」

「それはどなたなんですか?」

「知らない男の人」

 怖くない? それめっちゃ怖くない?

「知らない人なんですか? 少しも?」

「少しも」

 全く思い当たらない、と言った表情で小首を傾げるのは仕事帰りのヤマギシさんだ。今日も残業終わりの様で、随分と夜がふけてから来店した。プレミアムフライデーってなんだっけ?

「ヤマギシさんが少しも知らない方が何度も夢に出て来るなんて、なんだか怖いお話ですね」

「まぁ、時々いろんな夢に出て来るって感じで。別に怖い夢でもないし、良い人そうだからいいんですけど」

 いんかーい! 怖がっている俺に向かって、ヤマギシさんはあんまりにもあっさりと言う。いや、それならいいだけど。

「ただ不思議だなぁって思って」

「確かに不思議ですよね。たまに続きものみたいな夢を見るときはありますが、そう何度もありませんし。ちなみにどんな男性なんですか?」

「それが良く分からないんですよね」

 分からんのかーい! じゃぁ、どうしてそれが同じ男性だって分かるわけ?

「ん~なんか、知ってるって思うんですよね。夢の中ではしっかりと顔が分かるんですけど、目が覚めると忘れちゃうんです」

「夢の中のお話ですものね」

 確かに夢って何となく、楽しい夢とか怖い夢とか、そういう輪郭は覚えていても細部までは起きたら忘れてしまうし、それはそれで仕方ないのかも。

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