6.わかったこと

 俺が町につれて来られてから三日が経った。

 俺は支部長が言ったとおり、町の宿で監視される生活をしている。

 なんと監視者はあの黄金メロンちゃんだ。たまに交代要員として短い間、別の人が来るが、基本的には彼女が居て、三日三晩同じ部屋に居る。監視されてるとは言え、金髪巨乳美少女と生活するとかやはり夢か。

 俺が実は悪者で彼女を襲うことも考えられるのに、役を任されているということは、彼女が相当腕に信頼がある人物なのか、または俺がそんなことはできない人間だと思われているかだ。

 おそらく前者だな、狼ぶった切るしね……。

 その黄金メロンちゃん、名前はリーシャ・レイローラルといい、ハーフエルフという種族らしい。外見は十代後半だが実際年齢は二十三歳ということだった。


 さて、この宿に居て監視されながらもリーシャにちょいちょい話しかけ、聞き出すことでわかったことがある。案外ちょろいのでは。

 まず、ここは日本ではないらしい。

 レイ・ウィングズという世界の、大陸東にあるラインアルストという町だ。この世界の自治体としては小規模ながら、日本で言えば、県庁所在地にあたるようだ。

 窓から外を見てみる限り、文明レベルとしてはいわゆる中世ヨーロッパ風をベースとしているが、ちょこちょこと近代的な感じもする。


 そして、驚くことも多々あった。

 まず、落ち着いてから気づいたが、日本語が通じるのである。俺以外の人間が話す言語はまったく知らないものなのに、意味がわかるのだ。まさに異世界ファンタジー。

 ……よく考えれば初めにリーシャが言っていたのも日本語じゃなくて知らない言語がわかる、って感じだったしな……。

 そしてファンタジーといえば、魔法だ。

 リーシャがふと、何も無いところから物を取り出したのだ。最初に見たときは驚いたものだ。

 なんだなんだと言うと、さも当たり前のことをなぜこいつは知らない? という風な目で見られたが、おとなしくすることを条件に少し教えてもらった。

 『収納魔法ストックス』といって、個人個人固有の別空間に物をしまっておける便利魔法だ。

 マジか、便利すぎる……とやり方を教えてもらいたかったが、俺に魔法が使えるかわからないし、俺の立場上教えてくれるはずもないので聞くのはやめた。

 

 そしてこれが一番驚いたこと。

 リーシャの実年齢を聞く前に、彼女に対し、


「俺より若いっていうのにしっかりしてるよな。俺が君みたいな歳の時は……」

 

 なんてつぶやいたら、


「何を言ってるんです、私とそんなに変わらない感じじゃないですか」


 と言われた。

 こっちは三十路過ぎたおじさん手前だぞ。そんな童顔でもないし、冷やかしかなんかか? と思い、鏡を見たとき、ここ最近で一番わけがわからなくなってしまった。

 そこに映っていたのは、三十路を過ぎたサラリーマンではなく、二十代前後あたりの青年だったからだ。

 ……は? これって――

 これは俺の若い頃の姿だ。いったい、いつから、こうなった。

 しかし、ただ取り乱して騒げば俺の立場が悪くなる。

 そこで俺は怪しまれないようにリーシャに遠まわしに聞いてみた。


「そういえばこの世界って、若返りの魔法とかそんなのもあるのかな?」


 何回目かの俺の質問に、何か諦めたようにため息をついてからリーシャが答えた。


「――存在はするかもしれません。しかし、そのような魔法、私は聞いたこともありませんし、行使できる人もいないと思います」


 ということは、魔法の可能性は低い。加えて言えば、初めてリーシャに会った時から俺はこの姿だったと言うことがわかる。でなければ彼女から先に指摘が入るだろう。

 ……ふむ、よくある異世界に来た時のボーナスか何かだろうか?

 そう俺が考えたとき、部屋のドアがノックされた。

 入ってきたのは、支部長のミストだった。

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