ソーシャルゲームの発展はゲームを「生活」に変えた
『駅メモ!』というスマートフォンアプリをご存知でしょうか。
実はフジテレビがリリースしており、当アプリの収益はバカにならないと聞くのですが――
このゲームは『Ingress』や『ポケモンGO』のような、プレイヤー自身が移動する位置取りゲームであり、プレイヤーが実在する駅にアクセスすることでポイントを稼ぐものです。
全国の駅をチェックポイントとすることができ、なるべく多くの場所にアクセスしようと他府県に足繁く「遠征」している人も少なくないと聞きます。
そのゲームをプレイしている間、ユーザーは「でんこ」と呼ばれる女性キャラクターたちと移動にかかる時間および駅にアクセスしていた事実を「共有」していくこととなります。
これは、「でんこ」たちと旅行しているに等しいのではないでしょうか。
もっとも……悲しいかな私自身は旅行などめったにできない貧乏生活なのでプレイしていないのですが――端から見ているとそのように感じます。
この「キャラクターと共に旅する」という行動様式において近年重要な役割を担っているのは、スマートフォンアプリであると思います。
たとえば昔からアニメのキャラクターのぬいぐるみやフィギュアなどと写真を撮って、キャラクターとその場にいるという実感を得ている人も少なくないわけなのですけれど――
現代はスマートフォンアプリやAR(拡張現実)の発達により、より身近にキャラクターの存在を感じられるようになったのではないでしょうか。
ここで『はいふりスタンプ』というアプリにも触れておきたいと思います。
「はいふり」とは2016年に放送された、艦船乗組員の候補生である少女たちを主役に繰り広げられる海戦と青春のアニメーション作品で、1話終了時に正式タイトル『ハイスクール・フリート』がゲリラ的に発表されたことで話題となりました。
その『ハイスクール・フリート』のキャラクターたちと一緒の写真に映り込むことができるのが『はいふりスタンプ』というアプリです。
ユーザーは旅行や何気ない風景の写真など、多くの写真のなかでお気に入りの子たちといっしょに収まっていました。
3ヶ月に1回「俺の嫁」が変わる、とも揶揄されるほど目まぐるしく消費されるコンテンツが変わるご時世において根強いファンに支えられているようにみえるのですが、それにはこのアプリの存在が大きく寄与しているようにも感じられます。
ユーザー側の主体的で「ナラティブ」なキャラクターとの時間の共有、「同時間性」をいかに公式側が供給でき、またユーザー間で盛り上がれるかでコンテンツ消費の寿命が左右される。それをみていくうえで「はいふり」とこのコンテンツ展開のあり方はもっと顧みられてもいいのではないでしょうか。
このようなアニメとアプリの両面展開は、ほぼ同時期のTVアニメ『アクティヴレイド ―機動強襲室第八係―』でも『めざましマネージャーLiko』というめざましアプリで試みられました。
アプリゲームという面でいうならば、アニメとほぼ同時にゲームをリリースする、という流れが一時期多くありました。その一例としてはアニメ『結城友奈は勇者である』のアプリ『結城友奈は勇者である 花結いのきらめき』(通称・ゆゆゆい)などがあります。
以上の例から、現在のアニメ展開がいかにユーザーとの間で「同時間性」を築こうとしているかに腐心しているか、ということが現れているのかと思います。
ソーシャルゲームは現代社会のあり方を大きく変えたと思っています。
特に「ログインボーナス」をはじめとした「ゲームに毎日接続させる」という生活習慣を多くの人になじませた、という側面はもっと強調されていいと思います。
ソーシャルゲームのアプリにログインして、その中で毎日お気に入りのキャラクターと「逢う」ということが、ユーザーにとって生活の一部として位置づけられたのです。
その点において、ユーザーにとってソーシャルゲームは決してただのゲームではなく、みずからが主体となってゲームと過ごした「同時間性」が、リアリティのある特別なもの、みずからの一部を構成するものとして受容されているのではないでしょうか。
だからみずからと異なる解釈を受け入れなくなる、というようなことも生まれてくるのではないかと思っていまして。みずからの作品受容と大きく相容れない違いは、自己を否定されているようにみなして強く反発する人も現れているのではないかとおぼろげに感じているのですが……また本題と逸れますね。
そのあたりもみなさんの意見を乞いたいところです。
ともかく、ソーシャルゲームと毎日共にある生活を送っているうちに、そのゲームはそのユーザー自身にとっても切っても切り離せない自分の一部、ナラティブな体験となっているのではないか。
そして、そういった体験を通していかにコンテンツを生活に溶け込めさせるか、ということがコンテンツを多くの人に受け入れさせるか、ということがこれから重要になってくるのではないか――というのが当項目の主題なのです。
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